merrydeer

フレンチアルプスで起きたことのmerrydeerのレビュー・感想・評価

3.1
物語の中心は久しぶりの休暇で連日のスキーバカンスに訪れた四人家族。(夫婦と男女一人ずつの子供と言う構成)
バカンスの最中に見舞われたアクシデント時の夫の行動が妻と子供たちに失望感や不信感を抱かせ、残された休暇中も常にぎこちなさやふとした事で崩壊すらしそうな危うい空気感を家族内で漂わせています。
そのアクシデントというのが、割と洒落にならないレベルの惨事ではあるものの、旅行時のちょっとしたトラブルから楽しいはずの時間が一転して人間関係に亀裂が生じ、苦痛な空間に様変わりしてしまう、誰しもに経験のありそうな居心地の悪さをそこに同席させられているような生々しさで描いております。

夫の行動を受け入れる事ができない妻と自身の行動の非を認める事ができない夫。その意識の掛け違いは旅先で知り合ったカップルなども勝手に巻き込みながら、どんどんと溝を深めていく。
不信から衝突を経た先に行き着く夫の独白はヨハネス・バー・クンケの演技も相まって観ているこちらの気持ちも動かされる正に熱演。

平坦なトーンでありながら、観賞者を作品に引き摺り込み、人間味溢れる演技で最後には心を揺さぶる展開は名作マンチェスター・バイ・ザ・シーにも通じる所があるかな、と感じました。
とは言え、多少なりとも前を向こうとしてるマンチェスター〜の鑑賞後に残る不思議な心地良さに対して、どこまでも残る心地悪さとやっと垣間見た救いの手を振り払う勢いの意味深なオチとで、こちらは最後まで濃厚な意地悪さです。笑
merrydeer

merrydeer