してちゃん

フレンチアルプスで起きたことのしてちゃんのレビュー・感想・評価

4.5
フレンチアルプスのスキー場併設ホテル、そこに自分が滞在しているかのような臨場感を終始感じれたのが、まずとても心地よかったです。

例えば部屋のドアの前のシーンが象徴的に何度も登場するんですが、広めの絵の同じアングルで毎度繰り返し描かれる。
数日の関係に過ぎないのに、「またここに帰ってきた」という滞在中特有のあの刹那なホーム感を疑似体験できて、その空間で過ごす気分を共有できる。
そのおかげで、作られた物語を外から見てるのでなく、かなり登場人物に近い心境で全ての出来事を味わうことができました。

絵作りがいちいちとても美しく、雪山やホテルを感じてるだけで快感が大きい。
シナリオ中心で都合よく圧縮してデフォルメするのでなく、長回し固定カメラでじっくり、生のスピードでシーンを切り取るので、人間のやり取りがリアルで、これも嬉しい。

こういう感情の時、人は確かにこういう動きをするよなあ、という、普通なら無視されるような行動のディテールがすごく上手に表現されていて、作り物のしらけ感がほとんどない。これがすごい!
どうやってそういうネタをストックして、実際の役者の演技に自然に落とし込めるのだろう?

こうやって全方位的に、作り物のご都合主義による雑味を丁寧に潰してくれているからこそ、作中で描かれている家族の気持ちの苦しさを、素直に生生しく味わえる。

もっというと、ただ伝えたいメッセージを正しく伝えるための下地作りの手段としてそれらを潰していっているのではなく、潰したことで現れる、絵、時間、空気、擬似感覚など全てが、映像そのものの快感要素になっている。

この監督は全部こんなレベルで作っているのか? これから他を見んのが楽しみ!

終わらせ方も上手い。