あけび

ぼくを探しにのあけびのレビュー・感想・評価

ぼくを探しに(2013年製作の映画)
4.6
出会ってしまいました。これは運命の映画かも
私の好き!を集めたような作品でした

幼い頃に両親を亡くしてから口がきけなくなったピアニストのポールは、過保護気味の叔母2人と暮らしている。不自由ない暮らしだが、いつも孤独な彼の心の拠り所は母親との記憶。
代わり映えのしないある日、ひょんなことから階下に暮らす摩訶不思議な女性
マダムプルーストの部屋に迷い込んでしまう。
彼女の不思議なハーブティーには音楽と共に記憶を呼び覚ます不思議な力があるのだった…


絵本から出てきたようなキャラクター性の強い登場人物や、暖色でまとめられた画面は観ていてウキウキします。
監督はイリュージョニストなどのアニメ出身の方。言われてみれば全てアニメに置き換えても違和感無いです

また過去の記憶を呼び覚ますキーとなるのは、幼い頃耳にした音楽
なので作品じゅうに溢れるノスタルジーなメロディがなんとも良いです
過去の記憶はミュージカル仕立てで斬新

台詞のない主役を演じたギョームグイはつかみどころのない孤独な優しい青年を好演。淡いブルーの瞳が印象的でした。
同時にポールとは真逆の、野獣のような彼の父(原題のAttila Marcel)を演じている意外性も面白かったです

意味ありげに見えて何も語られなかったり、逆に突然伏線回収したり
フランス映画にありがちな突飛な展開もありますが
それさえも愛おしくなってしまう、陽だまりのようなぬくもりに満ちています

さびれた心に染みいる良作でした。おすすめです。
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