このレビューはネタバレを含みます
観ているあいだ、なんとも胸が締め付けられた。ふたりは結ばれるのか? あえてそういう道を選ばないのか?
カフェで会いましょうというイラの提案に対して、自分が老年に差し掛かっていることを理由に、離れた席から見つめるだけで会うことをしないサージャン。ここがいい。
イラは夫と娘を残してブータンへ行く決意をする。
「間違えた電車でも正しい場所に着くのか。今に分かる」
その手紙はサージャンに出すのか、自分で持っていて時おり読み返すのか。どこかの空の下で。
同じセリフが出てきていた。同僚が電車の中で言っていた。
「母がよく言っていた。人は時々、間違えた電車でも正しい場所に着く」
サージャンはイラの居所を探していたんだろう。イラのところに来ている弁当配達人と最後に電車に乗っている。
彼らの歌でエンドロール。
最後に電車の汽笛。ふたりにとっての正しい場所に向けての、新たな発車、出発ということではないか。
並行して同僚との距離がだんだんと縮まっていくのが描かれている。これもいい。最後は結婚式に参列する。新婦側にはたくさんの参列者、アンバランス。
インドの都会の風景がわかった。なるほど、こんな感じなんだな。あれ、少し前にもインドの映画を見たよな? おばあさんが門番をしているやつ。と思ったらそれはジュンパ・ラヒリの短編だった。
さらにひとりきりで残りの人生を生きていく男の姿を見せられ、なんとも言えない気持ちに。そんな彼に、隣の家の少女は最後に手を振ってくれた。ささやかな変化、幸せ。