高橋典幸

グッド・ライ いちばん優しい嘘の高橋典幸のレビュー・感想・評価

4.5
映画『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』感想〜第二次スーダン内戦で親を失った難民孤児が難民キャンプで13年間過ごした後にアメリカへ移民として渡り住む難民と支援者の物語。

3回連続で見てしまいました。

戦争、両親との突然の生き別れ、戦争孤児、難民生活、難民支援、移民、移民支援、異国の第三国定住での生活。本作『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』は、予告映像と公式サイトで紹介されているようなポップなものではなく、実に重い問題提起の物語でした。

移民を題材に扱った作品として日本でも公開された映画『サンバ』は、セネガルからフランスに移民として移住して10年ほどがたち、ビザのうっかり失効をしてしまい。。。というところから物語が始まるのに対し、本作『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』は、幸せに楽しく暮らしていた幼い子どもたちが、第二次スーダン内戦の戦下に巻き込まれ、突然、両親を失うというところから描かれます。

その後、大自然の中を敵兵士や猛獣や害虫などから隠れ隠れしながら安住の地を求めて数千キロも徒歩でさまよい、命からがら難民キャンプにたどり着く様子や、難民キャンプでの生活、そして、移民として出国、アメリカへの入国、異国での就職、学業につく様子、その後が描かれます。

2つの作品とも、移民当事者と移民支援者の両面を描いていることは共通項で、物語として描く移民支援のステージが違うことから、難民事案や移民事案を多面的に垣間見られるということでは、双方、貴重な作品です。

民族の思想や宗教観があるのでしょうが、本作に登場する南部スーダンの青年たちは、家族、親子、兄弟、祖先、仲間(宗教的な兄弟)意識とつながりがとても強く描かれています。

近年、日本でも、観光のみならず、就労ビザで各国の人々が日本に短期か長期かで移住し働く様子を街でよく見かけるようになりました。そんな彼ら彼女たちを時に眺め、時に直に交流していくと、本当にたくましいなあと感銘を受けることが多いです。日本に渡ってきた理由や背景まではわかりませんが、力強さを感じ刺激を受けます。生きること、働くことに勇気をいただくことも多いです。同時に同郷同士の人々とのつながりも太そうだなあとも感じます。

まあ、思想、生活習慣や宗教観の違いなどから「おい、おい」と感じることもなくはないですが、逆に、私が異国で生活したら、きっと同じことを思われることでしょう。

私は観光や仕事で、アメリカ、中国、シンガポール、タイに短期間ですが訪れたことがあります。異国の異文化、その国で育ち生活している異なった風習や常識をもつ人々と交流することはとても刺激的でした。

また、私は北海道出身ですが、仕事やボランティアで、日本国内では、東京都、京都府、兵庫県、群馬県、千葉県と移り住みました。同じ日本ではありますが、都道府県によって、言葉然り、こうも文化や風習や常識が違うものかと刺激を受けました。

その移転生活の中のある6ヶ月間はブラジル人やペルー人の皆さんと毎日お仕事をしました。別のある2年間はアメリカ人3人と同じ屋根の下で一緒に4人で住んで自炊生活をしました。日本に来ている海外の方たちと仕事や生活をともにした経験も刺激的でした。

物語の冒頭、つぶやかれる言葉

幼いころは、知らなかった。
世界がこんなにも大きいなんて
こんなにも自分たちと違うなんて

この言葉は沁みました。しみじみ「そうだよなぁ」と。

エンドロールで表示されるアフリカのことわざ

急ぐなら1人で行け
遠くへ行くなら一緒に行け
If you want to go fast, go alone.
If you want to go far, go together.
African Proverb

これは、知っていることわざでしたが、本作終了時に改めてみせられるとこれまでになく沁みました。

エンドロールで、本作の主要配役に、元スーダン難民や元少年兵の方々が出演されていることが紹介されます。ここは驚きました。ふとした所作やちょっとした佇まいのシーンでも、表情や身体からにじみ出てくる説得力には圧倒され、見いってしまっていました。なるほどなと。

知らない世界を垣間見させてくれた作品。

貴重な映画でした。


映画『グッド・ライ~いちばん優しい嘘~』感想|高橋典幸ブログ
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