絶頂期のフライシャー監督によるスリルと暴力に満ちたロードムービー。黒沢清監督のオールタイムベスト第2位。主演は前年の「パットン大戦車軍団」(1970)でオスカー主演男優賞受賞(辞退)のジョージ・C・スコット。撮影はベルイマン監督の常連スヴェン・ニクヴィスト。音楽は「オーメン」(1976)でオスカー受賞の巨匠ジェリー・ゴールドスミス。
かつてシカゴの犯罪組織の運び屋だったハリー(ジョージ・C・スコット)はポルトガルの港町で静かに暮らしていた。家族は去り、娼婦モニーク(コリーン・デューハースト)との付き合いで空虚な日々をやり過ごしていた。しかし9年ぶりに意を決し運び屋の仕事を請け負う。脱獄囚ポール(トニー・ムサンテ)と愛人クローディー(トリッシュ・ヴァン・ディヴァー)をフランスへ送り届ける仕事だったが。。。
シンプルに面白かった。男二人と女一人というロード・ムービーの鉄板設定をベースに、スリリングな銃撃アクションと逃亡カーチェイスが繰り広げられる。
冒頭から流れるメロディアスな弦楽器の劇伴が印象深い。ジェリー・ゴールドスミスの音楽は今まであまり意識したことが無かったが、本作では映画を大いに盛り上げる要素となっていた。
ニクヴィストの撮影はベルイマン監督作のイメージが強く、本作のような迫力あるカーチェイスも撮れることに感心。
何よりもラストの締め方が秀逸でとても好みだった。邦画の任侠ものをドライにした感じ。海外評では“ハンフリー・ボガードへの回帰”、“ヘミングウエイの世界”とのキーワードが並んでいた。個人的にまとめると、田舎で生ける屍となっていた男が“生”を確認するために再起し、次世代に“生”をつないだ自己満足の中で眠りにつく、孤独者のロマンを描いた一本。愛車が不調になると休憩しエンジンが止められると息絶えるというフェティッシュな表現も印象深かった。
※本作撮影時、ジョージ・C・スコット(当時43歳)は娼婦役のデューハースト(当時44歳)と長年の夫婦だったが、撮影後に離婚しクロ―ディー役のトリッシュ・ヴァン・ディヴァー(当時29歳)と再婚。最後まで連れ添った。
※当初はジョン・ヒューストンが監督だったが、ジョージ・C・スコットと対立し三週間で降板、フライシャー監督に交代した。