PolarBear

ブック・オブ・ライフ ~マノロの数奇な冒険~のPolarBearのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

 『デビルズ・バックボーン』『パンズ・ラビリンス』『永遠の子どもたち』等をはじめとして名作を世に送り出し続ける,あのギレルモ・デル・トロがはじめて関わったアニメーションというだけで,観る価値アリ。実際に『パンズ・ラビリンス』の設定画や絵コンテでは彼の非凡さが垣間見えていたし,『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』の冒頭で説明的に示されるアニメーションのクォリティも非常に高かったわけで,私はワクワクしながら鑑賞しました。

 映画はまず,博物館の玄関から始まります。とっても扱いづらそうな子どもたちに手を焼く学芸員。そこにもう一人,博物館のガイドが現れ,簡単に子どもたちをあしらうと,博物館の特別ツアーに誘います。そこで子どもたちが見たのは,ラテンアメリカを舞台にした,壮大な叙事詩でした。

 オープニングからもう,目はくぎ付け。色遣いのみごとさ,描写の大胆さ,極彩色な世界にうっとり。そして日本人が大好きなフォーマット,〔むかしむかし あるところに〕が巨大な本のページを捲ることで提示されるのだから堪りません。もう,好物が全て目の前に出されて,心を奪われている間に物語が始まってしまうという,最高のスタート。
 これはまた,質の良い落語の舞台を味わうのにも似ている感じがしました。まくらから心を掴まれて,一気にお話に入っていくという,あの手法ですよ。

 物語はホアキン,マノロという仲の良い2人の成長を縦軸に,死者の日(と3つの世界)を横軸にして展開していきます。ホアキンとマノロは,ともにマリアが大好き。大人になった日には,きっと自分がマリアと結婚して…そう夢見る子どもだった時代から物語は始まります。
 マリアはある日,引っ越していってしまうけれども,ホアキンとマノロは再会の日を信じて自らを鍛えていきます。そう,マリアにふさわしい男になるというモチベーションのもとに。

 さてこの世界は重なりあった3つ〜〔生者の国〕〔記憶される者の国〕〔忘れられた者の国〕〜から成り立っています。人は死んでも,その人のことを誰かが覚えてくれている限り,存在するのです。彼らがいる世界を〔記憶される者の国〕といいます。
 しかし時が流れ,その存在を誰もが忘れ去ってしまった時,彼は〔忘れられた者の国〕という,次の世界に送られるのです。この世界に送られたものは,ほんとうの意味での“死”を迎えます。もう二度と,他の世界に戻ることはできないのです。
 これら3つの世界のうち2つを,シバルバとラ・ムエルテという2人が治めていました。シバルバは自分が寂しい〔忘れられたものの国〕を治め,妻でもあるラ・ムエルテが明るく楽しい〔記憶される者の国〕を治めているのを不公平だと訴えます。2人は言い争いの末に,賭けをすることを決めました。ホアキンとマノロのうちどちらがマリアの心を射止め,ゴールインするのか…シバルバはホアキンに肩入れし,ラ・ムエルテはマノロを選ぶ。勝者は〔記憶される者の国〕を手に入れることになったのです。
 どうしても自分が勝ちたいシバルバは,秘密裏に無敵のバッジをホアキンに授けます。どんどん強くなっていくホアキンに対し,闘牛士なのに牛を殺したくなくて歌い手になりたいマノロ。
 さらに時は流れて,ついに美しく成長したマリアが帰ってきました。

 これは,アメリカ大陸にある《死者の日》をモチーフにして描かれた娯楽大作です。物語は面白いし,声優も一流,音楽も言うことなし(一応,ミュージカルということになっているようです)ですが,だからといって面白くなるとは限らないのが映画の難しいところ。
 しかしそこはやはりギレルモ・デル・トロ,ぬかりのあろうはずがありません。途中で現れる様々なキャラクターの,なんと魅力的なことでしょうか。そして息をもつかせぬ展開,以外な結末。そして物語が終わった後に再度描かれる博物館のシーンでも,驚かされる展開が待っています。

 マリアの声は,ゾーイ・サルダナが演じています。あの『アバター』でヒロインのネイティリを演じて一躍スターダムに上がり,続く『スター・トレック』2作でもヒロインのウフーラ役を好演した“乗ってる”女優さんですね。また,シバルバの声は,ロン・パールマンが演じています。彼はもう,ギレルモ・デル・トロの映画には欠かせない俳優です。また,マノロの曽祖父スケルトン・ホルヘはオペラ歌手ですが,これをプラシド・ドミンゴが演じ,素晴らしい歌声を披露しています。

 日本公開(DVD)も,もうすぐです。必見の娯楽大作^^
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