PolarBear

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場のPolarBearのレビュー・感想・評価

4.4
こんな気持になるなんて…
予告編を観るだけでは決して理解できない深さ,汚さ,滑稽さ。
安全な場所から爆撃(狙撃)の判断を下している諸々の方々の描き方は批判的ではありますが,最終盤に中尉が発言した内容の,なんと重いことよ。

この映画の技法は,《対比》にあるのだと思います。2人の少女,鳥や昆虫という,見かけのかわいらしさと恐るべきその性能,“安全な場所”で判断を下すお偉いさんと実際にトリガーを引かねばならない“現場の人”,任務遂行のために大金を躊躇なく(バケツやパンやお使いに)使う工作員と僅かな金を値切る母親,貧しい暮らしや日常に迫る危機とバスローブ,とってもチープな造りに見える爆撃用トリガーと実際の性能,テロリスト抹殺のためには作戦遂行は当然というアメリカと人権云々を重視して慎重なイギリス…などなど。

どうして殺し合いがなくならないのか,そういう暗澹たる気持にさせられる作品ですが,同時に観て良かったと思わせる魅力も湛えています。自分ならどうするか,私には最後まで決断ができませんでした。
戦争映画というには表面上とても静かな,しかし観るものに緊張を強い続ける展開には圧倒させられました。
ヘレン・ミレンの凄さをまたしても見せつけられましたし,アラン・リックマンに再会できた(彼の遺作のうちの1本です)という喜びも感じることができました。

邦題の副題は,再考を要すると思います。これじゃあ,本作の本質をついているとは言えない。
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