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シェフ 三ツ星フードトラック始めましたのTのレビュー・感想・評価

3.5
父子のキーとなるのはインターネット、映画作家としてのポイントは作品製作である。
主人公は息子を教育するが、一方で息子は主人公をTwitterやVine等のインターネット・サービスでサポートする。主人公はネットに疎い為、息子が居なかったら更に凋落していただろう ( 凋落のキッカケも又ネットなのだが )。本作には、ネット・ネイティヴの息子が父に料理を教えられながら父の生業に貢献する相互作用がある。ただ父が子を教育するだけではないのだ。こうして美味しい料理、魅力的な作品は後継され、時代を超えていく。
もう一つのキーポイントは批評家、そしてレストラン・オーナーである。本作の監督ジョン・フヴァローは『アイアンマン』で名声を得たのだが、続編となる『アイアンマン2』の評判は良くなかった (一応Rottenでは70%代とそれなりだが、町山智浩氏は「駄目な映画」と語っている)。『アイアンマン』のような超大作シリーズ映画は脚本が完成する前に撮影を始めることが多い。資金を出すオーナーがプロジェクト進行を規定する為、作家は自分が作りたい作品を作ることが出来ない。これは本作の主人公と全く同じ境遇である。よって、レストラン・オーナーの商業的判断によってクリエイティヴィティを制御される『シェフ』の主人公は、監督の分身と言える。インターネット、商業的事情、批評社会、これら作品に纏わりつく物たちはクリエイティヴィティを制限しかねない。しかし、魅力的な作品は、美味しい料理と同じく普遍的に人々を喜ばせるはずだ。そんな希望に満ちた映画。
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