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味園ユニバースのmatchypotterのレビュー・感想・評価

味園ユニバース(2015年製作の映画)
3.6
《“とある”芸能事務所に思いを寄せて》Vol.20

ポチオ、才能開花。
『味園ユニバース』。
渋谷すばる、適役。シンプルに歌うめぇな。

大阪の大阪〜天王寺とかその近辺であろうこの感じ。
個人的に一時神戸に住んでたこともあり、当時この辺はちょいちょいブラブラしてたこともあって、どこか懐かしみも感じた。

一時、天満近辺の環状線の高架下に人知れず店を構えてるドイツビール屋、どうなってんのかなーとか、自分の思い出も呼び起こされた。

そんなこんなで関西という街の雰囲気ならでは感がとても良かった。

生粋の東京人からすると物言いがドストレートで言い切り型の関西弁。

「しょーもな!」とか「なんなん?」とか「おもんなっ!」っていうフレーズが最初はものすごく恐怖。

ただこれも本当に突き放してる時もあるのだろうけど、これはこれでその地場の愛情表現というか。

そもそも、どこの馬とも知れない30代前半ぐらいの血だらけの記憶喪失の男を居候として住まわすスタジオ経営する女、なんて、なかなか現代社会ではありえないシチュエーション。

それが、「こいつ、どうする?」「かすみ、よろしく」からの、「はぁ?、、、ちっ!」とか言ってなんやかんやと「居候なんやから、早よ起きて手伝ってもらわな」となる展開。

これが、まぁしゃあないか、頑張れよ、としか思えなくなる雰囲気が“ならでは”としか思えない。

二階堂ふみ。彼女もまた適役。
特にこの作品ではまったく色気も何もないのだけど、記憶をなくして居座る彼にとってとても良い存在。

いわゆるツンデレに近い性格。
記憶がない彼をなんやかんやと気にかけながら、とはいえ、急かすことはなく、根掘り葉掘り聞くでもなく、寄り添う感じ。

もともと父から受け継いだしがないスタジオを淡々と回す肝っ玉が座っているだけに、その若さと玄人感と存在感がごちゃ混ぜの役所がたまらない。

恋心ドキドキ、かわいいー好きだー!みたいなキュンキュン、ではなく、でも何だかずっと寄り添ってくれてる優しさに甘えたくなる感じのキャラクターが良い。
でも甘えたら甘えたで、たぶん怒られるタイプ。

このポチオの過去、なくなった記憶に“曰く”があるのだが、そこがあまり深掘りされないのだが、話としては過去ではなく、そこからこの先どうするか、をテーマに描いているので、別に気にはならない。

記憶をなくし、ゼロからスタートとなった時、記憶はないけど体に染み付いた魂だけが揺れた時、人はどうなるのか、前を見て何ができるのか、を観る映画。

と言いつつ、後半は色々本人も思い出してきた時に、そのゼロからのスタートで得たことと、その過去が混ざりあって動き出す展開が見どころ。

あんまりろくなセリフもないまま、始まってちょっとしてからの傷だらけで歌う「古い日記」アカペラ、このインパクトが尋常ではない。
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