Yoshishun

劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンスのYoshishunのレビュー・感想・評価

4.0
“自分らしく生きる”

日本でも大人気なムーミンの原作者トーベ・ヤンソン生誕100周年を記念して作られたアニメーション。
本国であるフィンランド製作のため、原作に近い性格のムーミンたちが描かれているだけでもファンにとっては堪らない作品だろう。

本作は、南の島へバカンスに向かったムーミン一行が、ムーミン谷とは違うセレブ生活をしていくという内容。ムーミン谷では、決して裕福ではない質素な暮らしながらも、友達が多く自然も豊かなリラックスな生活を送っていた。しかし、バカンス先ではセレブが使う高級ホテルに宿泊し、周囲の反応からして明らかに場違いと云わざるを得ない。フローレンスとパパムーミンは地元の住民と打ち解けていくものの、普段の生活から乖離されたある意味閉塞的な空間に不満をこぼすムーミンとママムーミンは徐々に孤立していく。地元で知り合った公爵と仲良くなるパパムーミンや、見るからにチャラい男にゾッコンなフローレンスから無視されるムーミンの姿が中々残酷であった。また、フローレンスがビキニをしている時、ムーミンが「それじゃ僕らは裸でいるみたいじゃないか!」と怒る場面があるように、ムーミンとして、トロールとしてのアイデンティティーを尊重してほしいという叫びに聞こえてくる。

序盤に登場する海賊らの下りがバカンスでの1幕とあまり繋がりがなかったり、推しであるキレイな子安ことスナフキンがほぼ出番なしなのが不満ではあるが、ムーミンという作品の中でアイデンティティーを失うこと無く自分らしく生きる大切さを説いた深い作品に思えた。もちろん、リトルミィがお転婆さやフローレンスの面倒臭いヒロイン性といったキャラクターの個性の強さも魅力的でファンムービーとしても面白い。
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