満点。だって音楽と映画が奏でるハーモニーが最高なんですよ。この作品は、音楽を愛する、音楽育ちの人たちによって作られ、またそういう人たちに愛される映画だと断言できる。
色んな事情で人生につまずいた登場人物の心の欠片を一つずつ拾い集めてくれる重要な主役が「音楽」として登場。恋愛で傷ついたシンガーソングライターのグレタと会社からクビを宣告された崖っぷち音楽プロデューサーのダン。この二人の出会いのシーンから、もう音楽の魔法はかけられているので、演出のニクさに舌を巻いた。レーベルとの契約を目指すために、ダンがグレタとバンドメンバーを集めて手作りのレコーディングをし始めるのだけれど、イマジネーション溢れる展開が素晴らしい。
一番のポイントは作品を通じて「売るために書く音楽」と「自分の書きたい音楽」の間の葛藤、何気ない風景に魔法をかけてくれる音楽の存在など大事なテーマに触れつつ、気楽に誰でも飛び入り参加を歓迎するような温かい空気を感じることができるところ。
マーク・ラファロファンとしては大満足。みすぼらしい落ち目の音楽プロデューサーでも、ダンのキャラは車で色んなデモテープを聴いては、「才能ナシ」とキレながら駄目出ししまくってた時点で好きになってた(笑)。キャラといえば、グレタの友達のスティーブも面白くて気に入った。脇役でも大事なピースだ。アダム・レヴィーンのヒゲいじりがツボにハマってしまった。
この作品のキーラ・ナイトレイはとにかく素朴で可愛い。『ベッカムに恋して』の頃のキーラを思い出した。控えめの演技のなかにも、グレタの頑固な音楽家の面もきっちり伝わってきた。おまけにこんなに愛らしい歌声の持ち主とは知らなかった。サントラはしばらくヘビロテ決定だ。