分かりそうでよく分からないけど、バカみたいに単純化するならば、ありがちな設定のファンタジーに死の気配が漂う黒沢節を盛り込んだラブストーリー。色味を抑えた寒色系の映像を始めとし、新聞配達員のおっさんの所々奇妙な行動、ピアノ好きの妹、初対面時にぼーっと虚空を見つめているような薫、お決まりの風に靡くカーテンなど、執拗に感動を煽るようなやかましいBGMで進行するストーリーの中に不穏さが常に漂っている。生と死を描いている今作で黒沢清が得意とする演出がとてもハマっているし、これを撮る理由も理解できる。そこから真っ当にラブストーリーへと突き進んでいくのも好き。ただ、全貌を理解した気には全くなれない映画だった。
