くさむすび

ナミビアの砂漠のくさむすびのネタバレレビュー・内容・結末

ナミビアの砂漠(2024年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

カリテで1回目を見て、座席選びに失敗したのも作用してぼーっと見ながら「つまんねー」と思ってたけど、今回の2回目はめちゃくちゃ楽しめた。

この映画、意外にも丁寧に構成されているなと感じる。初っ端、徐々にカナにズームアップしていく場面があるが、これは日常に溶け込む人間、自分たちの周りにもいるような人間の物語であることの宣言に見えた。イチカとの会話でノーパンしゃぶしゃぶとかマルチの勧誘の話に関心が行きながらも「社交辞令に思われたんじゃない?」と適当に話を合わせる姿、ハムをそのまま食べたりハンバーグを解凍することを諦めてアイスを食す所はカナの性格を語らず映像で見せているし、世間一般に馴染んでいる人間であるのを表しながら、キャッチに言い返すシーンは彼女の強気さを感じる。45分を過ぎたあたりで出てくるタイトルはこれからのハヤシとの生活が「ナミビア(=何もない)の砂漠」であることを分かりやすく暗示していて、意外と親切設計。序盤は種を蒔きつつ、中盤から一気にストーリーで畳み掛ける。この構成が初見時には感じなかった面白さだった。

初めて見た時に困惑したルームランナーのシーンは、走ってカロリーを消費しながらかっぱえびせんを食べてカロリーを摂るという矛盾した行為をしながらハヤシとの喧嘩を眺めていて、これは自分の取っている行動が無意味であることに自覚的でありながら、それを止めることができないもどかしさを描いていたのかなと考察した。(後日追記:そういえば、かっぱえびせんのキャッチフレーズは「やめられない、止まらない」だった)

山中監督はパンフレットに『性加害やハラスメントのニュースを聞いて、「映画制作って全然楽しくないじゃん」と思った」的なことを書いており「信頼がおける監督だなー」と思っていたが、それを踏まえるとハヤシにカナが投げかける「どの面下げてモノづくりしてんだよ」とか「お前みたいなのが作ったものは毒」と言い放つ場面は山中監督の本音のように聞こえる。

結局この映画が何を言いたいのか、自分はラストにそれを見出した。あの時ハンバーグを食べなかったから、最後2人で食卓を囲むことができた。生き辛い世の中を少しでも楽に生きていくには物の見方を少しでも変えること、これが大事なのではないかとラストからは受け取った。
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