天豆てんまめ

マイ・インターンの天豆てんまめのレビュー・感想・評価

マイ・インターン(2015年製作の映画)
3.9
気持ちが爽やかに、穏やかになる空気感に溢れたウェルメイドな好編だと思う。さすがナンシー・マイヤーズ監督。人物描写に味わいがあり、いい台詞も沢山。

作品のルックとしては「プラダを着た悪魔」から10年。アン・ハサウェイが社長として、メリル・ストリープ的立ち位置で戻ってきた。って感じ。

今まで色んなデニーロを観てきたけど、ロバート・デニーロの柔らかな笑み。瞬きと挨拶の練習をするデニーロ。滑稽で、チャーミングで、味がある。

ビデオインタビューで彼が締めくくる言葉。「音楽家の引退は自分の中に音楽が消えた時、私の中にはまだ音楽があります」素敵な言葉だ。

「正しい行いは、迷わずやれ」ベンの好きな格言。言うは易し、行うは難しだが、すっと心に一本の芯棒が通るような、これもまたいい言葉だ。

初出社の音楽もいい。メーガン・トレイナーの「ALL ABOUT THE BASE」。そのギャップ感がいい。

机に一つ一つ置く、その置物にもその人の個性、性格、人柄がにじみ出る。
スーツの着こなし、綺麗に揃えられたクローゼット、クラシックな鞄。中身。きちんと、丁寧に、優しく、紳士に、親切に、人と、仕事と向き合う姿勢が素敵だ。なかなかこんな方いないけど、彼のような人に会えたら、彼のような人になれたら、そんな理想を具現化していたと思う。

そして、レネ・ルッソ。久しぶりに観ました。デニーロの相手役。時代の変遷を感じた。。

しかし、私が好きだったのはベン(デニーロ)を取り巻くボーイズたち。
ガールズトーク全盛の時代に、男だってこんな楽しいボーイズトークをしたいんだ!みんないいキャラクターしていて、潜入大作戦も楽しめた。中でもアダム・ディバインは「ピッチ・パーフェクト」でならした車中ラップが笑える。

おっと、主役のアン・ハサウェイ。「プラダ」メリル立ち位置でも、彼女は揺れ揺れ社長で感情も不安定。いや、状況は状況だけど、不安定過ぎないか、とも思ったり。でも観ていて引き込まれる感情表現豊かな女優さんだとつくづく思う。ベン=デニーロの前で泣くシーンは、「恋人たちの予感」のメグ・ライアンの泣きシーンを思い出した。

そのシーンで眺める映画は、ジーン・ケリーの「巴里のアメリカ人」かな。アカデミー作品賞を撮ったミュージカル作品で心情とシンクロしていい。

しかし、2人が交わす「サヨナラ」って敢えて言うのは、どんなニュアンスなのかしら?

まあ、後半の展開がウェルメイドに行き過ぎたか、ご都合展開を感じさせるというのがやや喰い足りない処だろうか。

でも、たとえウェルメイド過ぎても、いい気分になれればそれでGOOD。
「深く息を吸って~」の太極拳のシーンでも暗喩されるような、作品全体に流れる空気感が穏やかで心地よいのだ。そんな心に優しい風をくれる作品だと思う。

しかし、あんな風に人を包める人間になれたらいいな、70歳になるまでに。

まずは明日、ハンカチを持って、でかけよう(笑)