タマル

ダーク・プレイスのタマルのレビュー・感想・評価

ダーク・プレイス(2015年製作の映画)
2.0
markした映画を下から順番に消していく特集!
その3『ダークプレイス』
英仏米共同制作映画。2016年6月、日本公開。

本作に関しては、どうしてmarkしていたのかが全く思い出せない。なんでこんなものを観たいと思ったのだろうか。真相はダークプレイスである。

以下、レビュー。

カンザスの片田舎で母親と娘二人が殺害された「デイ一家殺人事件」の真相を、事件の23年後の2008年、事件のサバイバーであるデイ家末娘のシャーリーズセロンが明らかにしていく。ジャンルはサスペンス映画。
当時8歳だったセロンは混乱状態の中、半ば強制される形で犯人は兄のベンだと証言した。事件が起きた1985年当時、兄ベンは悪魔教崇拝者であったため、議論の余地なく彼は有罪とされた。

この1985年は、サタニックカルチャーにとって重要な年である。
68年の「悪魔を憐れむ歌」、1969年の『悪魔聖書(サタニック・バイブル』刊行及びカルト教団によるシャロンテート殺人事件、そしてヘルスエンジェルによる「オルタモントの惨劇」によってサタニックカルチャーはアメリカ全土に急速に普及していった。
80年代に至ってポップ化したサタニズムとヘヴィメタルの勃興が結びつき、82年に「リッパークルー」によるサタニズム連続殺人と、英国のバンド、ヴェノムによる「ブラック・メタル」の創立によって、道徳心の最後の砦キリスト教的保守主義を若者達がぶち壊してしまうサタニズムがもはや止めようもないムーブメントとなっていることが表面化する、
そしてついに、1985年、「ナイト・ストーカー」リチャード・ラミレズの登場と逮捕、手のひらに描いたサタンのペンタグラムのイメージと悪名高いACDC叩き及び「逆再生-潜在プロパガンダ」によってサタニックカルチャーに対する教会や保守勢力のバッシングが極に達した。余談だが、これらのムーヴメントは84年レーガン再選以降のアメリカの保守化と無関係ではない。つまりサタニズムの「悪魔化」と、それに対する激しいバッシングは、それを退治する善としての自己肯定というキリスト教的保守主義の逆プロパガンダでもあったのである。

そういった事情が本作にどう関わってくるかといえば、どうも関わってこないのである。これが恐ろしいほど関わってこないのだ。セロンが真相を追い始めたのは、ニコラスホルトに過去の殺人事件を話のネタにみんなでワイワイ楽しむ集団「殺人クラブ」で講演をしてほしいと頼まれることがきっかけなのだが、この「殺人クラブ」の存在が当時の、例えば「ストナーズ」などのサタニズム信奉集団への批評になっているかといえば、びっくりするほど関係がないのである。
結果として、本作は全く邪気も毒気も面白みもないミステリーであった。心情や事情も全て説明されるため人物描写も薄っぺらで、勝手に物事が明らかになっていくため、謎解き要素も薄い。

ただし、31歳寄付暮らしで労働意欲のないシャーリーズセロンの駄目感はキュートでよかったと思うよ。それだけです。

HELL YEAH!!!!
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