えんさん

ドラキュラZEROのえんさんのレビュー・感想・評価

ドラキュラZERO(2014年製作の映画)
2.5
タイトルを観れば、この映画は何の映画か一目瞭然。吸血鬼として知られるドラキュラ伯爵のルーツを、ファンタジー風に描いた作品。ドラキュラ伯爵のモデルといわれるのは15世紀に実在したワラキア公国(現ルーマニア)の君主ヴラド・ツェペシュ(別名ヴラド3世)。映画でも冒頭に描かれるが、トランシルヴェニアの小さな公国であったワラキア公国は、父ヴラド2世の代のオスマン帝国との戦いに敗れ、オスマン帝国の支配下に置かれる。主人公ヴラドは、弟とともにオスマンに人質に出される。オスマンの戦士としてのエピソードは、その人質時代やオスマン帝国の支援を受けながら、ワラキア公として復権するところまでのこと。映画は、そのワラキア公として返り咲いてから、支援国だったオスマンに反旗を翻すまでを描いている。

史実でも、映画に描かれるようにオスマンの大軍をゲリラ戦で蹴散らし、オスマン兵を串刺しに吊るしたというエピソードが残るほど、勇猛果敢というか、血気盛んな一面を持つヴラド。その戦いの中で教会の庇護を求めたり、妻が謎の死を遂げたりというエピソードも絡み、彼の周辺に漂う狂気と死の匂いが吸血鬼という異名を作り出したのだと思います。映画に戻ると、この作品はそういう史実を織り込みながらも、吸血鬼という存在がいるという前提で、彼の武勇や悲しいエピソードをファンタジーとしてお話をうまく構成していると思います。

彼自身が吸血鬼としての力を十二分に発揮し、オスマンの大軍を蹴散らすところは映像としてもパワフルで力強い。上記のとおり、お話もうまくできているとは思うのですが、全体的にどこか安っぽいというか、チープな匂いが拭えないのはなぜなのでしょうかね。。演じている俳優に有名どころがいないのも正直厳しいところなのかもしれないですが、それよりも作品に重厚感がでるようなインパクトをどこかに盛り込んで欲しかったとも思います。「アンダーワールド」シリーズや「トワイライト」シリーズなど、近年でも吸血鬼映画というのは一つブームなところでもあるので、開き直って、それらのシリーズにつながってしまうようなお話に構成しても面白かったかも(昨年の「プロメテウス」のように)。シリーズ化しないのなら、ラストもあそこまで引っ張る必要もなかったかなと思います。

それにしても、ウラドが吸血鬼になってまで守りたかったものというのが、この終わり方で実現できたのですかね。家族の長としてはまだしも、ワラキア公国の君主としても(後半で結成した独自軍のリーダーとしても)相応しくなかったと思うのですが。。(笑