このレビューはネタバレを含みます
戦闘シーン、厳しく雄大な大自然、vs熊、そしてディカプリオの鬼気迫る演技。
ここまで映像のすべてに凄みがあると、感動を通り越しちゃって、「撮影大変だっただろうなぁ」という心配の方にばかり想いが向かってしまうのが良くないw
「復讐は神がやっとくから
お前らは憎き敵に対しても与え続けろよ」
ヒュー・グラスが繰り返し唱えていた、「復讐は神に委ねられた。私にではない。」を乱暴に言えば、こういうキリスト教の教えですよね。
確かにみんながこの考えを持てれば争いごとは減るよなと思えて、宗教の良い面が見えるような気はしてくる。
ヒュー・グラスは、ある時点から復讐のために生きているような状態になるわけだけど、元々はしっかり信仰心を持っている男。
彼の中では、家族と信仰の2つが大きな比重を占めていて、そのうちの家族を全て失ってしまった。
さらに悪いことに、そのことによって生まれた復讐心が信仰までをも揺るがす。
ヒュー・グラスの本当の戦いは、フィッツジェラルドとの間ではなく、内なる自分との戦いだったんじゃないかと思った。
「ケチな復讐のためにここまで戻ってきたのか。だが息子は生き返らないぜ。戻ってはこない。」
最後の決戦で、フィッツジェラルドにこう言われる。
ヒュー・グラスは、その言葉にハッとして表情を見せて、また例の呪文を唱えるんですよ。
そして、フィッツジェラルドを川に流すわけだけど、そのあとにとにかく「水の流れ」の映像がいくつも重なって強調されるんですよね。
これはよく言われる「水=神」ということを表しているのかなと感じた。
川に流すことで「神に復讐を委ねた」ということに喩えられたんじゃないかと。
つまり、
「息子は失ったけど、自分の中の信仰は保たれた」
そういうことなのだと解釈しました。
その後に妻の幻影が微笑んで、ヒュー・グラスも微笑み返したので、ここで終わればなんとなく理解できた気にもなったんですが、
その後にどう解釈すれば良いのか分からない謎の表情を見せて幕を閉じるんですよね。意地の悪い作品だよなぁw
よく耳を澄ますと、エンドロールに入ってもヒュー・グラスの息の音がしばらく聞こえるんですよ。そして、途中で聞こえなくなる。
なので、感情からきた最後の表情というよりは、死の直前の顔だったのかなぁという気もしたり。
様々な解釈を走らせることができる作品は楽しいよね。
トム・ハーディがまた恐ろしく素晴らしい演技!