セガール幹事長代理

沈黙ーサイレンスーのセガール幹事長代理のレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
2.5
江戸時代中期、キリシタン弾圧真っ只中の長崎で行方不明になった宣教師を探す外人の話。

『江戸幕府+キリシタン狩=島原の乱』の図式が出来上がっているニワカ歴史オタクからすると、作中に『島原の乱』どころか『徳川』『松倉』『天草』ってキーワードすらマジで一度も出てこないのがびっくりした。

長崎の百姓身分に対する迫害の原因は宗教的弾圧、悪政による税金の取り立てはもちろん、日本との交易を独占しようとする南蛮人の利権争い、呂宋侵攻計画や参勤交代による藩の財政圧迫など様々である。
なので、キリシタン狩りに焦点を当てて当時の日本を映し出すことそのものは悪くないが、「俺らも仕事だから」って言いながら絵踏みさせる武士と震えながら神に祈る百姓の映像が長いこと続くので単純に途中から飽きてきた。
キリシタン大名として有名な大友氏、有馬氏と南蛮との付き合いの変遷あたりを交えて前中後編で作り直してほしい。
間違いなく面白くなると思う。

せっかく外国人がこの映画作るんだしと、変わった切り口の解釈を期待したが、なかなかの通り一編ぷりで潔さを感じた。

とはいっても、「なぜ日本にキリスト教は馴染まないか」を宣教師と武士が語るシーンは興味深く、「仏教は修行で菩薩に近付けるが、キリスト教においては人は神に成れない」と優しく解説してくれたあたりで思わず「なるほどねぇ」って呟いてしまった。
まるで自分が考えたかのように、いつかこのセリフを使うことを決意した。

この時代に存在しないはずの正確な日本地図が登場したり、武士が高い英語力(石川遼<武士≦麻生太郎)を駆使し外国人と普通に会話できることに対し違和感を覚えつつも、「なんやかんや製作サイドは日本のサムライに(誤解はあれど)敬意を払っているのか」と自分を納得させながら鑑賞を続けたが、日本に何年も住んでるスペイン人が永遠にカタコトなのはどうなのって思った。
意地でも母国語を貫く関東在住の関西人の如く。

あと本作の悪役として登場する『イノウエ』って武士は実在したらしく大変勉強になったが、こんなにマニアックなやつ登場させるなら徳川家光ぐらい出してやれよとも思った。

散々書いたが、金かかってる映画はなんやかんやで面白いな、とも思った。