うちの奥さんが大学の卒論のテーマが遠藤周作『沈黙』だったと聞きまして｢じゃあ次の休日『沈黙-サイレンス-』二人で見に行こうよ(´∀｀*)ｳﾌﾌ｣とデートに誘ったんですが｢何の救いもない鬱になるだけもう二度と読みたくないし見たくなーい(＾ω＾)｣と断れたので１人で見てきました。
原作未読でスコセッシ監督の『最後の誘惑』もみてません。
キリスト教に関してはカトリックとプロテスタントは仲が悪いと言う事を『ヘルシング』で読んで知ったレベルの知識しかないボンクラですのであしからず(_ _)
祈り続ければ天からイエス様が現れて皆を救ってくれる等と本気で信じてる人はまずいないでしょう。
宗教や信仰とは｢アイデンティティ(これも日本語訳が難しい言葉)｣みたいなモノ？自分自身の拠り所や自分が生きてこの世に存在している事を確認させてくれるモノ。
不安定な自己を安定させる為にはこの世を創造した｢神｣の存在を信じる事で絶対的に不変なモノに対して自己を置く事で自分が信じる事や生きていく上で必要な事のまず第一の基本、足場みたいな物を宗教や信仰が与えてくれる。
例えば愛とか信じる心とかそれ等形の無いものを入れておける｢器｣でもあるのかなと思うですが。
『エヴァンゲリオン劇場版air/まごごろを君に』で人類補完計画が発動し全ての人々が肉体の境界線を失いLCLの液体になってひとつに溶け合ってしまいましたけど、あれは｢神｣が存在する事ではじめて｢人｣は存在できると言う事(英語タイトルは確か｢I need you｣でしたっけ)人類補完計画はその境界線を無くす事で人類を天国へを導く、正に神を必要としない世界を創造する為の神殺しの計画だったのかなと思うのです。
幕府によるキリシタン弾圧、酸鼻を極める残酷な拷問や処刑ですがアレクセイ･ゲルマン監督『神々のたそがれ』でも宗教弾圧や虐殺のシーンで逆さ吊りにして肥溜めに突っ込む処刑をやっていたのですが『神々のたそがれ』のいくつかのシーンは長崎のキリシタン弾圧を描いた版画家ジャック･カロの作品を元ネタにしていて(木から果物の様に人が鈴なりに絞首刑にされている絵や前記の逆さ吊り等)『神々のたそがれ』も同じテーマを扱っていて舞台は遠く離れた別の惑星だったのですが『沈黙-サイレンス-』も欧米人から見たら当時の日本は言葉は勿論文化や風習その違いはまるで別の惑星みたいな物だったでしょうし、棄教し行方不明となったフェレイラ神父を探す二人の宣教師の異世界探訪の冒険の旅にも見えました。
『フォースの覚醒』では消えた｢最後のジェダイ｣ルークを探すお話しでしたが、棄教し消えたフェレイラ神父を探す2人の神父はキャストのせいもあってダークサイドの誘惑と戦う二人のジェダイ騎士の旅にも見えましたし、これをJ･G･バラード的な内宇宙(インナースペース)SF、精神世界でのジェダイとダークサイドの戦い、みたいにも見えました。
西洋と東洋のカルチャーギャップが此処でもやはり存在していて日本人のキリシタンたちにとって｢キリスト教｣とは特別で万能なモノで祈り続けれぱイエス様が救ってくれると本気で信じていたのか。
死ねば自動的にパライソに行ける。
そこは天国で病気も苦役もない。
自分はクリスチャンでないしキリスト教に何の思い入れも無いので非常に不謹慎な感想かも知れませんが、これは｢神｣と言うマクガフィンをめぐる物語だったなと。
ロドリゴ(アンドリュー･ガーフィールド)とフランシスコ(アダム･ドライバー)は二人揃って修道服姿で立つ姿は絵になりましたけど、主人公として感情移入出来ませんでした。
スコセッシ監督『クンドゥン』でも中国によるチベット侵略とラマ僧への拷問虐殺宗教弾圧が描かれましたが、宗教は麻薬だと語る毛沢東と人民解放軍はまるでナチスの様な完全な悪役として見ることが出来ましたが、長崎奉行井上はじめ日本･幕府は完全な悪役として勿論描かれてませんし、当時の彼らからしたらキリスト教禁令弾圧とは外来生物駆除や外国から入ってくるウィルスの防疫の様な認識だったのでは。
とにかく素晴らしく、そして最低だったのがキチジロー(窪塚洋介)
真主人公であり狂言回しのキチジローはユダで道化で途中から｢悪魔｣にも見えました。
SW新三部作の真主人公(になる筈だった)ジャー・ジャー・ビンクスはこういうキャラクターになる筈だったのでは？
即ちキリスト(救世主)になる筈だったアナキンを堕天させる存在。
ジャージャーは人間のキャラクターがやるべきだった。
ロドリゴとキチジローの関係はやはり言われている通りキリストとユダの暗喩でもあり、更にリア王と道化でもあり、そして(本来なら)アナキンとジャー・ジャー・ビンクス。
SW新三部作でルーカス監督が参考にすべきは黒澤明監督『影武者』『乱』ではなく遠藤周作『沈黙』だった。
『沈黙』に答えは全てあったのに。
処女受胎で誕生したアナキン≒キリストを裏切りダースベイダーへと｢転ばす｣ユダ、道化、トリックスターとしてのジャー・ジャー・ビンクスが描ければ新三部作はもっと違う物になっていたと思います。
『ローグ・ワン』は初めてとも言える神(フォース)無き世界でのスターウォーズで『沈黙』でパードレ(神父)たちが殉教していった様に、ローグ・ワンのメンバーたちもフォースと共にあらん事をと唱えながら殉教して行く。
あちらもデススターの設計図と言うマクガフィンをめぐる物語で最後に｢希望｣に繋がる。
『沈黙』も最後のシーンはそれでも信仰は潰えないと言う希望が繋がって終わり、何でしょう。
†オマケ†
少し気になったのが、仕方ないですけど武士から百姓に至る迄英語ペラッペラな日本人だらけなのは何故？(笑)
パードレ２人も日本語覚える気が全然感じられませんし未知の異国へ行ったのに英語母国語普通に通じるって当時の日本はどんだけグローバルなの(笑)
昔日米の小学生が交換ビデオレターをしたらコッチは必死に英語で送ってんのに向こうはいっこうに日本語喋る気配が全くなくて｢来日したアーティストだってドーモアリガト位言うぞ！｣と交流終了したと言うのを思い出しました。
