さうすぽー

沈黙ーサイレンスーのさうすぽーのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
3.9
自己満足点 77点

遠藤周作の原作小説をマーティン・スコセッシが映画化した本作。
(二連続でスコセッシですが、偶然です)

宗教の対立や異国の価値観との相違、人間の弱さ、それを含めた人間の哲学を描いているように思えます。

それとは別にして、遠藤周作の「沈黙」を巨匠のスコセッシが監督を務めると聞いたときはワクワクしました。
やはり日本の文学がハリウッドで映画化されるのはやはり誇りを感じますし、何か嬉しい気持ちになりました。

ちなみに僕は原作は高校の時に読んでいたのですが、あまりに惨く救いの無い内容から何度も挫折しながら読み終えました(^_^;)


日本における宗教間や価値観等の対立等が描かれ、アンドリュー・ガーフィールド演じるロドリゴが苦悩する物語。

その、ロドリゴと井上筑後守の宗教観や価値観との心理戦が原作通りに面白く描かれていると思います。
また、井上筑後守演じるイッセー尾形がたどたどしい日本語ながらも非常に演技が上手く、アンドリュー・ガーフィールドもロドリゴとして見事に熱演してきます。
他のアダム・ドライバーやリーアム・ニーソン、他の日本人キャストも皆素晴らしいです。

また、江戸時代における長崎や処刑場のセットがスケールが大きく、物凄くリアルです。
その上で映像が美しいので、時代劇としても美しい映画だと思います。

そして、処刑シーンもリアルなので、惨さと痛々しさがこちらも伝わってきて、結構辛かったです。


ただ、劇中で井上筑後守が元キリシタンだったという事は原作で描かれてるのに対し、映画ではそこに触れられていないです。
その事実を描くのと描かないのとではだいぶ違ってきますし、彼の人物像が解りにくくなってるのが残念です。

また、劇中で日本におけるキリスト教の弾圧が日本の価値観の不一致のみしか描かれなかったのですが、歴史的な背景も描いた方が良かった気がします。
史実では、キリシタン大名の多くが海外に日本人奴隷を売っていた事で、キリスト教=奴隷を増やすという事に繋がってしまった背景があります。
それが禁教令が行われた理由の一つであるのですが、キリスト教の負の歴史を描かないのはだいぶ保守的な気がします。

一応フォローすると、そこに関してはキリスト教の信者にも鑑賞させるためのものだというのは理解は出来るのですが、個人的にはそこの説明がある方が物語の背景として深くなった気がします。

あと、上映時間がさすがに長いです。
音楽無しで淡々と物語が進むからか、所々退屈してしまいます。


とは言え、キリシタンの弾圧を通して宗教とは何か、国の価値観とは何かを考えさせられる内容になっていて、宗教映画の中でも面白い映画です。