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ドイツ発の音楽映画だ。
全体的に重苦しい展開ながら、最後は少しホッとできる終わり方で良かった。
満足の逸品だと言えよう。
私は森羅万象、あらゆる芸術に精通している格調高きナイスガイなのだが、唯一音楽については、とんと不調法なのである。
そこは、あらかじめご理解いただきたい。
なんせ、ト短調とトタン屋根の区別もついていないのだ。
シューマンとしゅうまいの違いも最近知ったのである。
どうかその辺の事情をくみ取った上で、以下の拙文にお付き合いいただきたいと思う。
最近観た「オートクチュール」や「セッション」をなんとなく思い出しながらの鑑賞だった。
そう、これは師弟の物語なのである。
主人公はジェニーという少女だ。
殺人の罪で刑務所に収監されている。
非常に凶暴な性格で、暴れだしたら手がつけられないのだ。
屈強な看守をも叩きのめすのである。
もう一人の主人公がミス・クリューガー先生だ。
かなりお年を召している。
彼女はこの刑務所にピアノを教えるために赴任してきたのだ。
これは、ミス・クリューガー先生が、ジェニーのピアノの才能を見抜き、彼女にレッスンを施していくという物語だ。
だが、一筋縄ではいかないのがジェニーなのである。
次第にミス・クリューガー先生に心を開いていくのだが、肝心な時にぶち壊してしまうのだ。
ジェニーは腕っぷしが強く気も荒いが、その心は餃子の羽のように脆いのである。
(例え!)
ピアノの心得があるほどの少女が、なにゆえこのような境遇に?
ジェニーの過酷な過去が徐々に明かされていく。
また、ミス・クリューガー先生にも苦しい過去がある。
物語の中で時折はさまれる、戦時中の挿話。
これは、ミス・クリューガー先生の若かりし頃の物語なのだ。
重い過去を背負った二人なのである。
「私は誰にもお辞儀などしない」
マナーを重んじるミス・クリューガー先生に対し、ジェニーは言い放つ。
ピアノのコンテストに出場しても一切お辞儀などしない。
そんなジェニーが物語の最後でお辞儀をするのだ。
ミス・クリューガー先生に・・・。
いい映画だった。
序盤は若干眠気を誘われたが、それは他の作品でも同様だ。
私は大概、晩ご飯をいただいてから映画を鑑賞しているのだ。
序盤は眠気との戦いなのである。
さて、この作品で私も少しばかり音楽に詳しくなったと言えるだろう。
様々な事が知れて、私の知識欲もかなり満たされたのだ。
最大の収穫を挙げるとすれば、トタン屋根は音楽用語ではないという事であろうか。
私の知識欲は、とどまる事を知らないのだ。