このレビューはネタバレを含みます
あらすじとしては、殺人犯としての冤罪を着せられた女の子(ジェニー)が、天性のピアノの才能を、刑務所のピアノ教官(クリューガー:老婆)に見いだされて、コンテストに出場する、というもの。そのピアノ教官はナチス・ドイツの時代に友人を失ったという過去を持つ。
この映画のいいところは、単純な人間性の成長の物語ではないというところ。ジェニーも、クリューガーも、過去を引きづりながら、現在を生きている。何度も同じ過ちを繰り返す。悔い改めるということがない。刑務所を逃げ出して、コンテストに強行出場するジェニーは、師の教えとは違う、プログラムとは全く別の曲を演奏して、おのれの道を突き進む。けれども終演後、クリューガーのまえでは一度たりともしなかったお辞儀をして、警察に捕まるところで映画は終わる。
ハッピーエンドなんだかバッドエンドなんだか分からないけれど、最後まで先が読めない展開で、不思議な後味の残る映画だった。あと、ドイツ語ならではのイントネーションの強い語り口がとても強烈。