オトマイム

4分間のピアニストのオトマイムのレビュー・感想・評価

4分間のピアニスト(2006年製作の映画)
3.9
タイトルの意味するところがこれほど深く刺さるとは思わなかった。刑務所のピアノ教室からピアノコンクールへという異色作。ありえないと思う箇所もあるけれど引きこまれてしまう。モーツァルトやシューベルト他のピアノ曲も美しく的確に散りばめられとても好みだった。

心に深い傷を負いながら道を踏み外した人間が立ち直ることの難しさ、積み重ねた努力を一瞬にして無駄にする遣る瀬無さ。それらが、ヒロインの暴力的な負のエネルギーとピアノ教師の静かな熱意がぶつかったり離れたりを繰り返しながらていねいに描写されていた。ふたりの演技もすばらしかった。


↓ちょっとネタバレ




引用クイズのやりとりや、のこのこ登場する養父など、いくつかのエピソードがうまく本筋と噛み合っていないように感じる。おそらく作品に深みを与えようと導入した要素が逆に散漫な印象を作品全体に与えている点は否めないと思う。白黒はっきり分けられない人間の性を描こうとしたのだろうか。
また、ラストは噂に違わず圧巻だったけれど、個人的にはクラシックを美しく弾いて、そこからアレンジしてほしかった。
…という点を差し引いてもとても心に残る素敵な作品でした。