終戦の日ということで、太平洋戦争をテーマとした小説を映画化した「野火」2作品を観直したので、両作品の感想を記録しておきたいと思います。
まずは2015年公開の塚本晋也監督作について。
全作品観るくらい尊敬している監督作なので、公開時に映画館で鑑賞しましたが、今回ブルーレイで観ると、デジタルカメラの映像は鮮明すぎて、若干現代劇的に見えてしまう部分はありました。
特典映像のメイキングを併せて見ると、自主映画的な手作り感満載なのですが、何よりロケーションの美しさの中にある戦争とのコントラストが効果的で、飢餓状態に苦しんでいく過程とその先にある人の道を超えてしまう可能性の見せ方は、決してチープさは感じさせず、綿密に捉えるべきところを抑えた演出になっていて、個人から見た戦争のミクロな視点はどこまでも正しい形でした。
カニバリズムを含む残酷な表現も多分に含まれていますが、それだけに終わらない無言のラストに自責の念があふれ出ていて、今作ならではの戦後から距離を置いた時間の意思が見えてきます。
リリーフランキーさんの役柄は、市川崑監督作に比べて、キャラクターを生かした嫌みな役になっていて、異質なほどに際だっていて、印象に残りました。