このレビューはネタバレを含みます
自分の気持ちにフォーカスすることが不器用な人はいる。
人に話したり、書き記すことで、ようやくその気持ちに向き合えることは想像できるけれど、この作品は違う形を見せてくれて、何度も観た。
少しずつ少しずつ自分と向き合い、周囲と、特に義父と痛みを分かち合う様子が、心を打たれる。
主人公なりに感情や現実との向き合う方法を必死で探している様が傍目には奇行に見え、痛々しくも人生を舞台に見立てた喜劇と言えなくもない。
(方々の配信サイトでコメディカテゴリに置かれているのを見て)
「自分と向き合う方法」を探し求めていることにすら自覚が持てず、「興味」の扱い方を間違えていたのかも知れないと気づくシーンにはハッとさせられる。
だとしても、作中の主人公は随分と恵まれている。
試す時間、金、思慮深く思いやりや優しさを持ち合わせた人たちの存在。交通事故の相手でさえも!
その恵まれた環境を用いて、恵まれなかった現実の残酷さと優しさが描かれていたことを知ると、また再生ボタンを押している。
怒りと悲しみは表裏一体、破壊と再生は一対の物語、人を助け自分も助けられている、そんな作品に自分は感じた。
主人公が救われることで、観ている側も救われた気持ちになる。
自分自身への接し方に迷い悩んでも、映画(や本そしてゲームなどの体験)を通じて共同体や社会性と言われる感覚に触れ、誰しもがデイヴィスの様に自らを再構成できる機会に恵まれているのでは?と、この作品を観て思った。
「何かを直す時は…まず分解しろ。そして見極める。強さの源を。心の修理は車の修理と同じだ。まず隅々まで点検する。そして組み立て直す」
"If it's rainy,You won't see me, If it's sunny, You'll Think of me."
サンバイザーの裏に書き置かれたメモを見つけるシーンは特にお気に入りだが、作中のこれを邦題にするのはやや疑問に思う。原題のDemolitionでは直球過ぎると思われたとしても。
本編を観ることで答え合わせをさせるタイトルと言う意味なら、ギリギリ許容できない。
彼女との愛は存在していた。興味を持てないまま、蒔かれた種の芽吹くのを見ることもなく、彼女は行ってしまった。
ED曲Half Moon Run のWarmest Regardsにある最後の一節がまたエンディングにマッチして清々しかった。
" And the seeds sown in this garden start to grow! "