KANA

雨の日は会えない、晴れた日は君を想うのKANAのレビュー・感想・評価

3.9

地味だし、情緒的な作品でもないから好き嫌いが分かれるのかな…
個人的にはとても好感触だった。

ジェイク演じるデイヴィスの狂気は一見、『タクシードライバー』のトラヴィスのように外に向いているように見える。
でも実はとても内向的なものであり、彼の「内観」の第一歩だということが段々わかってくる。

出世コースに乗り、富も地位も手に入れたウォール街のエリート銀行員。
社会の秩序や建て前、安定した暮らし…そんな全体的なカタチをスマートにキープし続けることに必死になり、いつしかココロの潤いを失っていた。
妻の死に直面した時にもいつものプライオリティーである左脳がまず働き、
「こういう時は自然と涙が溢れてくるもんじゃないのか!?愛する妻が死んだんだぞ!」
という感じで自問する。
それがトリガーなんて、すごく皮肉だけど…

ひょんなことで交流することになったシングルマザーにしたためる手紙で心の内をさらけ出し、
義父の何気ない言葉により身の周りのモノをとことん解体・破壊しまくり、
街中でなりふり構わずロックに踊り出す。
ここだけ傍観してたら相当ヤバいサイコパスw

ただ、デイヴィスみたいに派手にやらなくても、こういう心の解放ってとても大切だと思う。
単なるストレス発散からもう一歩踏み込んで、自分と向き合い、内観することが。

車のサンバイザーに貼ってあった付箋…妻によるウィットに富んだお茶目なメモ。
そこに愛しさを覚え、涙する彼は妻がいない悲しみと同時に「生きてるって感じ」をしみじみ実感したみたいだった。

余談かもだけど、『しあわせ脳〜』なんとかの本で
「赤ちゃんの感情表現は泣くと笑うの2種類だけ。泣き&笑いは人間にとってプリミティブかつ特別な情動であり、どちらもパニックに陥らないよう脳がバランスをとるために起こる」とあったのを思い出した。
笑ったり泣いたりできない状態って人間として危険信号なんだよね…。

彼の家はモデルルームのようなスタイリッシュ感溢れる空間でまるで異次元だし(あのインテリア大好きだけど♡)、
視界に亡き妻の姿が度々現れたり、毛繕いする猿などメタファー的な画が唐突に挿入されたりで、映像はフワフワした印象が強い。
そのヴィジュアルが単純に好きだし、フワフワ感が観念性をより高めててデイヴィスのマインドに入り込んでる感覚がよかった。

ジェイクの目で語る演技は流石で、リュクスなスーツ姿もたまらなくセクシーだった。
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