kkkのk太郎

雨の日は会えない、晴れた日は君を想うのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

交通事故により妻を亡くしたことがきっかけで、破壊衝動に駆られるようになった証券会社の社員ディヴィスが、身の回りのものを破壊していくことで心の傷を癒そうとする様子を描いた人間ドラマ。

主人公デイヴィスを演じたのは『デイ・アフター・トゥモロー』『ナイトクローラー』のジェイク・ジレンホール。
デイヴィスと心を通わせる女性カレンを演じたのは『バードマン』『ヴィンセントが教えてくれたこと』のナオミ・ワッツ。

何やらオシャレな邦題がついているが、原題は『Demolition』=破壊。
何の前情報もいれていなかったので、てっきり狂気に駆られた主人公が破壊の限りを尽くすサスペンス映画かと思っていました。

実際、映画の前半では妻を亡くしたことで正気ではなくなった男デイヴィスの奇行が描かれます。
ジェイク・ジレンホールの目つきが最高でしたね。どう見てもイっちゃってる人っていう感じが良く表現されていました。

デイヴィスは家の冷蔵庫をぶっ壊し、通勤電車を緊急停止させ、会社のパソコンやドアをぶっ壊す。
当然周囲は妻を失ったショックで精神のバランスを崩してしまったのだ、と思い込むわけですが、実は問題の根本はもっと深いところにあるということがわかってくる。

彼は周囲の物質や人間関係をぶっ壊すことで問題の根本を探ろうとする。
デイヴィスと同じように問題を抱えているカレンや彼女の息子クリスと交流を深めていくうちに、物語もだんだんと文学的な深さを見せていくようになる。

こういう「愛とは何か」「生きるとはどういうことか」を問いかけるような文学的な作品、個人的に大好き。
ゆったりとした物語進行に加え、BGMの殆どはヘッドホンやカーステレオ等で実際にデイヴィスが聴いている音楽という演出が成されており、デイヴィスがヘッドホンを取るとBGMも止まる。
BGMが流れるシーンは限られているため、全体的にかなり静かな作品。
そのため、100分くらいの上映時間だが、実際にはそれよりも長く感じる。中盤ではちょっと退屈だと感じるところも正直ある。

とはいえ、物語がどのような決着をつけるのか予測できない作品だったので興味の持続力は強く、妻の秘密が明らかになってからエンディングまでは目が離せなかった。

デイヴィスとカレンの距離が近づくまでの展開は、オシャレではあるのだがちょっと無理があるかも、と思ったりもした。
深夜に突然電話してきたり、駐車場にいるのに姿は見えなかったりと、初めの方は「あ、これカレンは実はデイヴィスの作り出した妄想の女性なんだな😏」と思って見てたのは自分だけではないはず。

クリスがボコボコにされるというラストの展開も、脈絡がなくて飲み込みづらい。
デイヴィスが病院で目覚め、親密な存在は…という展開を終わりにも持ってくるという円環構造にしたいというのはわかるがちょっと無理やりだったかな?
いや、しかしクリスを演じたジュダ・ルイス、むっちゃ美少年だったなぁ。

ビジュアルの美しさや物語の静謐さを重視するあまり、映画全体が平坦になってしまっているのは事実。
もっとアクションやサスペンス要素を詰め込んだスリリングな映画にすることも出来た題材だと思うが、結果としてはこの低温な感じで良かったと思う。

デイヴィスほど極端ではないにしろ、誰しも今ある全てを破壊して新たな自己を形成したいと思う時があるのではないか。
そういう感情を少しでも抱いている人には、この映画はオススメ!
夫婦で観るのは…ちょっと気まずいかもね💦

映画の内容とは直接関係ないが、本作の邦題が相応しいかどうかというのは考えるべき問題かも。
個人的に原題を直訳するのではなく、独自の解釈から邦題をつけるという文化は結構好き。

『The Shawshank Redemption』=『ショーシャンクの空に』
『Sister Act』=『天使にラブ・ソングを…』
『The Mummy』=『ハムナプトラ』etc…

とはいえ、「おいおい、そりゃねーだろ…😓」という邦題も勿論ある。

『Guardians of the Galaxy Vol.2』=『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』
『Whiplash』=『セッション』
『The Bucket List』=『最高の人生の見つけ方』etc…

本作の邦題は、作中でデイヴィスが見つける妻のメモに書かれた内容が元になっている。

「If it’s rainy, You won’t see me, If it’s sunny, You’ll Think of me」

このように書かれたメモがデイヴィスの車のサンバイザーに貼ってある。
デイヴィスはこのメモのことにずっと気づかなかったのだが、ある出来事の後でこのメモを発見し、涙することになる。
このメモ、作中の描かれ方がものすごくさりげないので、初見の時は「ん、このメモなんでこんなところに丸まって捨てられてたの?」と思ってしまいました…💦

さらに初見時、このメモの意味がよくわからなかった。
というのも、ここの日本語字幕の訳が最悪だった。

「雨の日は会えない
晴れの日は思い出す」

と字幕が出るのだが、これ妻が茶目っ気でデイヴィスのサンバイザーに貼り付けたものなんだから、こんな堅苦しい訳じゃダメでしょう👎素人でもわかるよ。

「もし今日が雨なら、あなたは私を見てくれない…(>_<)
もし今日が晴れなら、私のことを想ってね(๑>◡<๑)」

くらいの軽い感じで訳してくれないと、このメモの意味がわからん。
タイトルをカッコ良くする為にこのメモの訳をキザったらしくしたんだろうけど、その為に作品の意に沿わない訳をするのはどうかと思う。
よって、本作の邦訳はダメ〜🙅‍♂️
kkkのk太郎

kkkのk太郎