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クリムゾン・ピークのsnowwhiteのレビュー・感想・評価

クリムゾン・ピーク(2015年製作の映画)
3.9
Filmarks3.4点だったのでパスしかけたけど見るとギレルモ・デル・トロ監督、ミア・ワシコウスカ、トム・ヒドルストンではありませんか!俄然興味が湧いて視聴!

いやあ、これ点数低すぎると思うなあ。ちょっと怖い雰囲気、いつものギレルモ・デル・トロ監督の世界観楽しめました。


クリムゾンとはピンクがかった赤い色の名前、ピークは丘。つまり赤い丘という意味だ。

赤い粘土質の土地なので冬に雪が積もると粘土質の土地が溶け出て雪が赤く染まるところからその丘がクリムゾンピークと呼ばれるようになった。物語はその丘に立つ館を舞台に展開する。

この館がすべてセットで作られていることに驚く。既存の屋敷を利用したのではなく、CGでもなく、実際に建てたそうだ。細部まで作り込まれていて見事だ。。ギレルモ監督のこだわりは半端ない。正にギレルモワールド全開でギレルモ好きはニヤニヤしてしまうと思う。


【自分の備忘録のために書いているので完全にラストまでネタバレします。未見の方はご注意願います。】


それに対して、物語は単純。
クリムゾンピークで取れるクリムゾン色の土は非常に利用価値の高い土でそれを採掘するのに必要な資金を得るためトム・ヒドルストンとジェシカ・チャステイン演じる姉弟が身寄りのない資産家の娘と次々と結婚しては殺し、金を奪おうとする話だ。

主人公のミア・ワシコウスカ演じるイージスも騙されて結婚して、アメリカからイタリアのクリムゾンピークに嫁いできた娘だ。

父が残した家や土地の処分を弁護士に頼んで何もかも捨てて言葉も分からない国に嫁いできた。財産を処分したお金は後で送金して貰う予定だ。

愛する人の元に喜び勇んで嫁いできた筈だったのだがクリムゾンピークに来てみるとどうも様子が変である。妻と夫が仲良くしていると姉が悉く邪魔をしにやってくる。まるで監視されているようだ。

実際に監視されている。覗き穴等があちこちにあり姉が監視していて邪魔をする為に紅茶を運んで来たりする。

その紅茶が怖い。毒が盛られている。直ぐに死ぬ量ではなくじわりじわりと蝕まれる量。姉が毒を盛っていることを弟は知っているので夫は出された紅茶を飲もうとしない。

妻には実は特殊な能力がある。10才の時母が亡くなりそれ以来幽霊が見える様になった。母の幽霊に「クリムゾンピークに近づくな。」と言われたが当時の彼女には何の事だか分からなかった。

しかし嫁いで来てその土地がクリムゾンピークと呼ばれていることを知って子供の頃の記憶が甦る。そうここは母の幽霊が近づくなと警告したあのクリムゾンピークなのだ。

その頃アメリカではイージスの幼馴染みがイージスを心配していた。

イージスの父が死んだと思ったら父が嫌っていた相手とイージスが結婚しその上直ぐに実家が売りに出されたからだ。何もかもがあまりに急で唐突だった。

彼は父親が相手の事を調査してその上でイージスと引き離そうとしていたことを知っていた。だから調査を頼んだ人に会いに行って報告書を見せて貰った。そこには驚愕の事実が…。

夫には法的な(正式な)妻がいるのに重複婚をしたこと。そして法的な妻の行方も重複婚された妻も行方が分からなくなっていること。2人とも身寄りのない資産家の娘で外国から来ていたこと。イージスとそっくりではないか!

しかも姉弟の母親も殺されていた。その時弟は12才、姉は14才であった為
、弟に犯行は無理と判断され寄宿舎のある学校に入れられ、姉の方は精神病院に入れられたらしいことも判明した。

慌ててイージスを救いにクリムゾンピークに向かう幼馴染み。彼は子供の頃からイージスを心から愛していた。

【再びクリムゾンピーク】
義姉に邪魔されるだけではなく、夫も変だ。結婚したと言うのに妻に1度も手を出さない。イージスは気分が優れず段々身体の調子が悪くなって来る。

そしてある日クリムゾンの粘土でどろどろになった幽霊を見る。幽霊は「ここから逃げなさい。でないとお前の手は夫の血で汚れるだろう。」とイージスに警告する。

エレノアは夫に幽霊を見たと訴えるが夫には何も見えない。義姉も幻覚よと取り合ってくれない。

(出ていくと言うイージスに姉の言葉が恐い。貴方にはここしかないのよ。貴方の家はここよ。

そう、イージスは何もかも捨てて実家の家も処分してクリムゾンピークに来てしまったのだ。嫌だからといって帰る家はもう無いのだ。行くところがないと言うのが本当に恐い。イージスが身寄りもなく孤独で逃げ場が無いことが本当に恐い。)

クリムゾンピークに来てからずっと外に出てないからと夫は「明日郵便局に行くので気分転換に一緒に出掛けよう。」と誘う。

次の日郵便局に行くと妻宛に2通の手紙が届いていた。

嵐が来そうだと言うので郵便局に泊めて貰うことになった。その夜二人は初めて結ばれる。

次の日クリムゾンピークに戻ったイージスに義姉は叱りつけて癇癪を起こす。どれだけ心配したと思っているのと言うが明らかに異常だ。

姉がいなくなってから郵便局で受け取った手紙を開けた。

一つは弁護士から。財産の処分が完了したので銀行からそちらに送金する為に書類にサインをして欲しいという。

そしてもう一通の手紙はギリシャから。E.シャープ夫人宛になっているその手紙の差出人にイージスは心当たりがない

弁護士の送ってきた書類にサインしようとして、ふともう一通の手紙が気になる。開けてみるとE.
シャープ夫人のE.はイージスではなくエレノアであったと分かる。

夫には過去にも妻がいたのだ。その名はエレノア。その文面からエレノアも身寄りがなく親の残した資産を処分してクリムゾンピークに嫁いできたことが分かった。自分とそっくりではないか!

イージスはエレノアという名前に見覚えがあった。姉が持っている屋敷の鍵の束にエレノアと書かれた鍵があった。その鍵は確か地下の部屋の鍵だった筈。行ってはならないと言われた地下の部屋…。

イージスはこっそり姉の鍵からエレノアと書かれた鍵を抜き取り地下に行く。

地下ではクリムゾン色のどろどろの液体のはいった貯蔵桶が幾つもあった。本やアルバム、他にも色んな物が置いてあった。写真には夫と見知らぬ女性が写った写真や赤ちゃんの写真があった。

ふと蓄音機に目が止まる。録音された声はエレノアの声。「自分はもうすぐ殺される。誰かが後に気付いてあの2人の悪事を暴いてくれることを願って音声を残す。」と言っていた。

イージスは全てを理解した。気付かれない様に逃げなくてはいけない。鍵をそっと義姉の鍵の束に戻すが姉は既に気付いていた。

気付かれたからイージスを処分しようと弟にいうが弟はもう止めようと言う。弟はイージスを愛してしまったのだ。弟を溺愛する姉は激怒する。あなたが殺しなさいと命じる姉を静めるため弟は囁く。ずっと姉さんと一緒だよ。2人がキスをしている所にイージスが夫を捜してやってくる。

姉と夫との関係を知ってしまったイージス。

「2人で殺したの?赤ちゃんまで?私の父はどうして殺したの?」

「もう全てを知られたからいいわね。弟は私以外とは誰とも寝なかったわ。赤ちゃんは私が産んだのよ。」と姉は言い放つ。父を殺したのも義姉だった。

(本当にこの姉、狂ってる。サイコで共謀)

イージスはあまりのショックで部屋を飛び出す。

姉がイージスに追い付き階下に突き落とす。

イージスが気が付くとそこはベッドの中。義姉が紅茶を勧めるがイージスは毒入りと知っているので飲まない。すると姉はスプーンでお粥を口元に運び貴方は紅茶より力をつけなくっちゃね。しょうがなく1口2口食べる。

夫はイージスに絶対紅茶は飲むなと教えるがイージスが紅茶に気付いて飲まなくなったので姉は食事にも毒を盛っていた。

イージスにお粥を食べさせながらの姉の言葉が恐い。

「母も私が看病したのよ。母を元気にしたのは私よ。」

(嘘でしょ?毒を盛って殺したんでしょ?)

「小さい頃弟は本当に可愛くって完璧だったわ。母は弟ばかりを可愛がり弟が何か悪さをしても殴られるのは私だったの。」

(だから母を恨んで殺したの? ジェシカ・チャステインがもう本当に恐い。そして美しい )

イージスは何とか逃げようとするが姉が追ってくる。
イージス絶体絶命のところへ幼馴染みが到着。イージスを連れ出そうとする。

姉は弟に幼馴染みを殺せと命令するが弟は刺そうとしない。逆上した姉は弟の頬を刺す。

幼馴染みは弟に「イージスを助けたい。貴方は医者だ。何処を刺せば死なない?貴方を刺すから死んだふりをしてくれ。(貴方もイージスも助けるから)僕を信じてくれ。」

弟は刺す場所を差し示し幼馴染みが刺した。次に姉を刺しイージスは助かる。幼馴染みがクリムゾンピークに来る前に呼んでおいた警察も駆けつけた。

(最後に夫がイージスを見つめる顔が何とも言えない。これまでが姉と共に悪事を働いてきた夫に同情の余地はないがイージスを愛おしく思う気持ちがとてもよく出ていた。トム・ヒドルストン流石です。)

血だらけの夫の顔に手をやるイージス。end

(あの幽霊が警告した通り。クリムゾンピークを去らなければ貴方の手は夫の血で汚れる)




物語は単純だ。突っ込みどころもある。意外性もあまり無い。それでも私はこの作品が気に入った。

主たる登場人物の演技力が飽きさせること無く最後まで引っ張る。彼らの演技がとてもいい。

そしてこの壮大なセット。繰り返すがこれは映画の為に建てられたセットでありCGによるものではない。ヨーロッパの既存の家を借りて撮影されたりしがちだがこれはそうではない。映画の為に建物を丸ごと建てたのだ。中の調度品から食器に至るまで実に豪華。豪華な設定なのに食器が安物だったりすると私はすごく気になって興ざめするのだがこの作品は一つの手抜きも無い。ギレルモ・デル・トロ監督のこだわりは半端ない。

そして監督の作品にはいつも何かしら登場するちょっと恐いもの。全然違うものなんだけど指の長さとか細さとかが少し似ていてまた出たねって思ってしまう。そしてなんかもの悲しい感じもいつもあるような…。
ギレルモ・デル・トロが好きな人には分かりますよね。
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