緋里阿純

地下に潜む怪人の緋里阿純のレビュー・感想・評価

地下に潜む怪人(2014年製作の映画)
3.5
パリの地下に広がる巨大墓地“カタコンベ”。そこに隠された錬金術の秘宝“賢者の石”を求め、仲間と共に足を踏み入れた美しき考古学者が、地獄の門を潜り惨劇を目の当たりにする様子をPOV手法で撮影したホラー作品。

考古学者のスカーレットは、若くして修士号や博士号、多数の言語を操る聡明な考古学者。亡き父の意志を継ぎ、錬金術の歴史やその完成形とも言える究極の物質“賢者の石”を求め、危険な場所への潜入や違法スレスレの行為も辞さず研究を続けていた。そして、パリの巨大地下墓地“カタコンベ”の隠された空間にその答えがあると知り、翻訳助手の旧友ジョージや、スカーレットのドキュメンタリーを撮影しているカメラマンのベンジー、地下墓地の案内人パピヨンと彼の仲間のスージー、ゼッドと共に探索に向かう。謎を解き、賢者の石を手にしたスカーレット達だが、【この門を潜るもの一切の望みを捨てよ】とダンテの『神曲』よろしく記された地獄の門を潜った事で、自分達が過去に犯した罪に襲われる事になる。

スカーレットとジョージによる謎解きは、『インディ・ジョーンズ』や『ナショナル・トレジャー』を彷彿とさせる。また、スカーレットが好奇心旺盛で怖いもの知らずな性格の為、謎解きや探索で躓かずにサクサクと真相に迫ってゆく様はストレス無く鑑賞出来て◎。

邦題の『地下に潜む怪人』というタイトルからは、『地獄の変異』的なクリーチャーパニックホラーを想像させるが、原題は『As Above, So Below(下なるものは上なるものの如く)』という錬金術の伝説の一説。なので、襲ってくるのは怪人やクリーチャーではなく、登場人物達の過去の罪や犠牲者が“罪の精算”と言える形で迫って来る。唯一、壁から出現した石像の怪物だけはクリーチャーらしいビジュアルをしているが、何を示していたのかは不明。また、カメラマンのベンジーが度々目撃し、彼を襲った女性の霊は何だったのかも判然としない。

閉鎖空間で容赦なく追い詰められていく様を疑似体験出来る作りは面白く、謎や不明瞭な点はありつつも、ホラーとして一定のクオリティが保たれており楽しめる。時間も93分とコンパクトな尺なので鑑賞しやすかった。
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