佐藤でした

コングレス未来学会議の佐藤でしたのレビュー・感想・評価

コングレス未来学会議(2013年製作の映画)
4.2
2014年のハリウッドに、“俳優の最も輝いていた時期の全てをスキャンし、そのデジタルデータを使い映画を作る”という新しいビジネスが誕生した。
大物俳優が次々と契約を交わす中、40歳を過ぎ、女優としての旬を終えようとしているロビン・ライト(ロビン・ライト)にも声がかかる。初めは笑い飛ばし、気にもかけなかった彼女だったが、女優の仕事は減る一方。難病の息子を育てるシングルマザーとしての現実に悩んだ末、巨額のギャラと引き換えに映画会社ミラマウント社の契約書にサインした…。

6万枚以上もの線画を手書きで描いたアニメーションと実写を交えたSF映画。『戦場でワルツを』のアリ・フォルマン監督が、今作では『惑星ソラリス』で知られるスタニスワフ・レムの「泰平ヨンの未来学会議」を原作に映画化した。


実写からのアニメ、そして再びアニメからの実写。そのスイッチングがあまりにも鮮やかで軽やかで楽しかった。
入り組んでややこしい題材を抜きにして、手間暇かけて作られた自由奔放なアニメーション表現は、人々のイマジネーションはどこまでも純粋で、際限がないことを教えてくれる。そんなワクワクをくれるエンタメ性に長けた作品に仕上がっていた。

失われゆく若さと、迫りくる老いという「現実」を真っ向から逃避する時代の到来を鵜呑みにせず、「虚構」の中にいる時も「これで本当に良いのだろうか」と自らを問い、悩み続けた彼女は、真の強い人間だと私は思う。

好きなシーンは、薬を飲んでスーッと昇天するように鳥の形になって空を飛ぶ場面。指先だけがただ羽根のように伸びて広がる様がシンプルで美しく、柔軟な絵心を羨ましくも思った。

…というわけで結局、本当に楽しい映画の時間だった。
「映画スターの末路」を見ていたはずなのに、老いる「現実」で全うに生き抜くか、幻でできた「虚構」で永遠の夢を見続けるか、究極の選択に身を投げ出されることとなった。

日本人としては、彼らが描いた“未来”に、世界で初めて原爆を投下された街「ナガサキ」の文字があり、真意はわからなくとも、その名が風化していない未来は少し明るいものに思えたのでした。
佐藤でした

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