YMZK

さよなら、人類のYMZKのネタバレレビュー・内容・結末

さよなら、人類(2014年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

ドキッとした

なんて素晴らしい映画なのだろう

以下メモ(ネタバレ含む)

 直行するプランに対して45度カメラを傾けることで、部屋の開口部を出来るだけ多く映るようにする さらにうつされた開口部は無理なく開けることで手前の世界と奥の世界、関係ない者同士が同時存在していることを示す→特に最初のシーンはまさにそれを示す
 ミキサーの音で夫が倒れることに気づかない妻もまた手前と奥の分断、そしてその因果を鑑賞者が見出そうとする、そんな構図がある
 スウェーデン(北欧)ということもあり上記の開口部の撮り方に関してはハマスホイの影響だろう
 CGをやっている人なら感覚的に理解されることとして、ガラスの反射をどうコントロールするか という命題がある。本映画に関しては徹底的に反射を抑えてガラスを除いた際のあっち側をものすごく鮮明に映し出す 絵画のような、非現実のような、フィクショナルな画を作り出している1つの技巧だろう 
 パンフォーカスのように焦点(ピント)が全ての物質に合あわせて撮るというのもまたuncinamaticな要因だ。そう、この映画はどこに焦点を当てるかは鑑賞者に委ねられている、徹底してフラットに作られている。それは動く人でもいいし、動かない建具、あるいは手前のカバンに焦点を当てても良い、そんな鑑賞体験もまた絵画的でこの映画を面白くさせる一つだろう。
 飛行場のレストランの窓が飛行機内の窓のように作られてるのがとてもいいなあと思った。かわいい
 ヨーロッパ特有の人気の無い雑カフェの雰囲気も最高、あれはあれで落ち着くんだよあ
 途中から人をどこに置くか ということに注目して鑑賞してみたらとても発見が多かった、まさに模型の添景をどこに置いて模型写真を撮るか見たいなこと。椅子の位置もそう、やや角度をつけたりしてどこに置けば何に焦点が向くか、奇妙さが出るか どんなスタディをすればあれが思いつくのだろうか
 雑カフェで急に始まるミュージカルでは連続キッスが人によって違うのめちゃ笑った、何人か激しい後にメロウなキスする奴の気持ち…
 にしてもああいうカフェにはトーネットの椅子が似合う 丸みのあるスーパーレジェーラみたいな椅子可愛かったのだけどなんの椅子だろう
 軍が入ってくるカフェの照明がどタイプ 今後街に出てあれを探す旅を始める ゆかのグレーピンクのカーペットと黄緑の色彩感覚も素晴らしい
 途中からどう考えてもウエスアンダーソンと比較してしまうよなあ、動的(Dynamic)なウェスアンダーソンと静的(Static)なロイアンダーソンと比較してみたのだけどどうだろうか 小気味良くシュールな音楽も2人ともセンス良いよなあ 音無しでみるとおそらくかなり重くてキツイのだけど、あの音楽で一気にコメディに持ち上げる感じ 笑っちゃいけない所で笑けてくる笑い
 最後のフィナーレ、大量の老人 生き残った人類?あそこで一気にタイムスリップしたような気がしたのだけどどうなんだろう そしてこのシーンでようやくガックリ反射を使う 最初全然気づかなかったのだけど 反射の歪みがめちゃくちゃ低いガラスを使っていて、それ自体はおもちゃに見えるくらいなのだけど、実はカーテンによってその反射率がまた更に上げられていること、
驚いたのはカーテンを開けた際の奥の老人たちと反射された人肉焼き機の反射のバランス(体験談的にこれ結構難しいんじゃ無いかなあ)
 
以上が絵作りについて個人的な感想で、内容についてもたくさん面白い点(エグいくらいセクハラするバレリーナとか、急に人焼き始めちゃう軍とか 夜中に急に叫び始める人、遺産を相続したい人、ゲイの皇帝などなど、社会が目を背けてしまうところを断片的に風刺する所もちらほら 気づけていない問題もあるよねとこちら側に語りかけられているよう

というわけで
RealとUnreal 、CinematicとUncinematicについ深く考えさせられる映画でした
映画の体験が鑑賞者側のこちら側の世界に飛び出して、映画館の扉を出た先にロイアンダーソンの世界があるのでは無いか とついつい妄想してしまいます。すでにロイアンダーソン監督のこちら側とあちら側の世界の語り方について、はめられているのかもしれませんね。

愛たっぷりの映画、つい語りたくなる映画です。また見よう

長くなりました、雑な感想すみません

天国にちがいない もみたいなあ
YMZK

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