Osamu

あやつり糸の世界のOsamuのレビュー・感想・評価

あやつり糸の世界(1973年製作の映画)
3.8
自分が見ている世界は他の人には違うように見えていて、みんながそれぞれ異なる世界を見ている。つまり、誰もが自分だけに閉じられた世界に生きている…。

子どもの頃、そんな妄想をしていました。本当にそうだったらどうしよう、と怖ろしかったです。

多層世界の妄想と恐怖を、VFX無しでどう表現するかを観る映画。

現実世界そっくりにコンピュータで作った仮想世界でシミュレーションすることにより、現実世界の未来を予想しようという国家プロジェクトが進んでいます。しかし、それを開発している研究所の技術局長が謎の死を遂げ、後任のシュティラーにも不穏な足音が忍び寄ります…。

1973年、西ドイツで製作された幻のSF作品だそうです。テレビで何度か放送されただけで、劇場初公開だとか。

う〜ん、僕はハマりませんでした。期待が大きすぎて、それを超えなかった感じです。古い作品ですが、新しいものを求めてしまったんですよね。

面白かったのは、美術です。当時最先端なのではないかと思われる西ドイツの工業製品が美しいです。電話機とか、椅子とか。

仮想世界と交信する装置のインターフェースがフルフェイスのヘルメットだというのも面白いです。ヘルメットの形がいいし、色が絶妙。

鏡を多用した凝った画面構成を見せてくれたかと思ったら、「なんだと!」のセリフとともに急に顔にズームアップするダサいカメラワーク。そういう落差も面白かったですね。

おどろおどろしい効果音、電子音といい、新しいものを求めるのではなく、レトロな感覚を楽しもうというスタンスで観ると、より面白いのかもしれません。
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