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ヘイトフル・エイトのEyesworthのレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
4.8
【雪山の南北決戦】

クエンティン・タランティーノ監督の生涯の10フィルムのうちの8作目。『ジャンゴ』の時代観を踏襲する部分も多く、差別のオンパレードで、8人の人物が雪山の一室で騙し騙されを繰り広げる異色のバイオレンス西部劇ミステリー。

〈あらすじ〉
猛吹雪で立ち往生を強いられ、あるロッジでひと晩を共に過ごすことになった互いを見知らぬ8人。人種も境遇も異なる彼らは、皆が訳ありの様子だった。密室の中で起こった殺人事件をきっかけに、やがて不穏な空気が漂い始め、それぞれの嘘が交錯していく…。

〈所感〉
これでようやくタランティーノが監督を務めた作品制覇!!
野暮だとは思うが、個人的にタランティーノ作品で順位を付けるなら…

🥇『レザボア・ドッグス』
🥈『パルプ・フィクション』
🥉『キル・ビル1』
『デス・プルーフ』
『ジャンゴ』
『ヘイトフル・エイト』
『イングロリアス・バスターズ』
『ジャッキー・ブラウン』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『キル・ビル2』

タイトルからしていかにも8〜なタランティーノの8作目。西部劇ミステリーという変わったジャンルだが、彼の持ち味が嫌という程堪能できて後期の最高傑作だろう。映画監督人生の終盤とあってサミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、マイケル・マドセン、ティム・ロス等タランティーノファミリーのオールスターが大集合。音楽はエンニオ・モリコーネが担当。特に個性派の大物サミュエル・L・ジャクソン扮するマーキスとカート・ラッセル扮するジョンが冒頭の対立から打って変わって手を組み始めてて強烈に面白い。でも、MVPはやはりイカレ女のデイジーとして怪演を見せたジェニファー・ジェイソン・リーだろう。西部劇では活躍の場面がなかなか見込めない女性があれだけ銃の乱撃に応酬して嬉々として血を浴びまくる画が楽しすぎる。マイケル・マドセンとティム・ロスは『レザボア・ドッグス』のイメージが強いが、今回も悪党の端役としていい味を出していた。チャプターの最終章で明かされるトリックは、ミステリー好きじゃなくてもオチはある程度予測はできるが、そこに至るまでの過程がタランティーノにしか描けない冗長さと過激さの両輪が駆動したぶっ飛んだ脚本で素晴らしい。サミュエル・L・ジャクソンが銃を顔の近くに持つセルフサンプリングのショットは『パルプ・フィクション』『ジャッキー・ブラウン』を通過したファンには堪らない。人里離れた密室という特性を活かして、色んな角度から室内を撮ることでそれぞれの人物の行動から性格を深く掘り下げ、生き生きとした映像となっていて最後まで一瞬も油断できない面白さだった。
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