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ヘイトフル・エイトのkmtnのネタバレレビュー・内容・結末

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

わりと公開当初から賛否両論な印象。
やっぱり長すぎるのかもしれない。前半は特に何も起きずグダグダ喋っているだけの為、苦痛な人には本当に苦痛なんだろうなぁ。


タランティーノ作品の中でもとりわけ、地味な作品だと思うけど、
僕はわりかし面白く観れた。


大した映画好きでもないから、元ネタとか全然分からないし、
じゃあ具体的に何がそんなに面白いかって説明できないけど、
極論、やっぱり好きなんだ。ただそれだけ。


オチは言ってしまえばレザボア・ドッグスなんだけど、
サミュエル・L・ジャクソンの顔面圧力がある分、こちらの方がポップな肌触り(ハーヴェイ・カイテルだとやはりマジすぎる嫌いがある)。
密室劇であるのも似ているレザボア感。


ウォルトン・ゴギンズ演じるクリスが、劇中一番いい役回りなんじゃないだろうか。
出だしは、絵に描いたようなチンピラなんだけど、後半は何かに取り憑かれたようなテンションになっていく。


※ 『ヘイトフル・エイト』は何を告発するのか? タランティーノ最高傑作が描くアメリカの闇
https://realsound.jp/movie/2016/03/post-1112.html


上記の記事で、ヘイトフル・エイトは「アメリカ全体の告発している」と言及されているが、タランティーノはこれまで、
イングロではナチス、
ジャンゴではアメリカ南部の奴隷制度と、
ある種、勧善懲悪的に、誰の目にも明らかな悪を断罪してきたが、
ヘイトフル・エイトで描かれているのは、白か黒かではなく、全てがグレーで覆われたアメリカ合衆国。
もちろん過去のアメリカだけではなく、今作の彼らの罪こそが今のアメリカを作り上げているという非常に自己批評的な精神の作品だと思う。


#metooムーブメントに於いても、いち早くハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ・パワハラに対して、「知っていたのに見て見ぬふりをし続けた」と謝罪を行なったタランティーノ。
もちろん人によっては、「謝ったからって終わるもんじゃない!タランティーノも同罪だ!」と言う人も少なからず見受けられる(メディアはどちらかといえば、同情的な様に感じたが)。
しかし彼自身、まだ禊は終わっていないと思っているのではないだろうか。

※タランティーノのワインスタイン事件について書かれた記事。
執筆者はロッキングオン社で唯一信用できる音楽ライター、こと俺たちの中村明美氏。相変わらず素晴らしい文章。
https://www.google.co.jp/amp/s/rockinon.com/blog/nakamura/168606.amp


タランティーノの次回作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」はシャロン・テートがチャールズ・マンソンの狂信者に刺し殺された実話を描いた作品になると言う。
作品の中身も観ていないのに決めつけるのは時期尚早だろうが、
これまでの流れからいえば、
次回作もおそらくアメリカ社会を批評した、さらに言えばタランティーノ自身を告発する様な内容になるのではないだろうか。


なんにせよ、タランティーノはただのバイオレンス映画オタク野郎ではなく、
社会性を十二分に内包しつつ、とんでもないエンターテイメントを提供してくれる、現代アメリカを代表する名監督なのは間違いのではないか。
来年の新作の公開がただただ楽しみ。
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