kirito

ベン・ハーのkiritoのレビュー・感想・評価

ベン・ハー(2016年製作の映画)
2.3
【どーしてこうなった…】

kiritoは唸った。
というより実際呟いた。
と同時に昨年アメリカで公開され大コケし、日本ではついにビデオスルーされた理由がわかった。
これは、仕方ない。うん。
いや、きっと本作が悪いのではないのだ。前作があまりにもよくできていたから…
こうなったのだ。



ーレビュー完ー






(以下は一応レビュー)

ベンハーオリジナル版は昨年視聴済み。
あちらはアカデミー作品賞受賞のスペクタクル映画。
馬のレースはスターウォーズのポッドレースに影響を与えるなど後世に影響を与える作品となっている。
あの作品をみたとき、単純にこの映像を1959年という時代に撮れたことが奇跡だと感じたことを覚えている。


さて、本作。
良かった点は短くなったこと。
前作は212分以上という驚異の長さなのに対して不要な部分を省きわすが120分足らずに圧縮。だいぶとっつきやすくなった。

また制作費190億円をかけたこともあり、船のシーン及び馬のレースシーンは確かに見応えあるものとなっている。


ただ、なぜなだろう。
話が頭に入ってこないのと、前作ほど主人公に感情移入ができない。
おそらくその原因は時間を短くしたこにも起因しそうだが、それだけではないはず。
そこで私が分析した結果、そうなってしまったのは以下の点にあると思われる。

まず、主人公ベンハーに感情移入がなぜできないのか。
例えば前作では瓦礫が落ちる事故を利用してメッサラーはベンハーを船の漕ぎ手の奴隷にするというシーンがある。
これだけみてもメッサラーが、いかにクソなやつかわかるのだが、まあ他にも色々あって、ベンハーの気持ちに立てば当然復讐を誓うことになる。
そうすると、ベンハーの視点でみている我々としても同じ気持ちにさせるわけだ。
対して、本作。ベンハーが奴隷制船に乗る事になったのは、ベンハーが助けた過激派の少年が王に矢を放ちその少年を逃したとこにある。いや確かにベンハーは今作でも悪いことはしていない。しかしこれでは理不尽さが出にくいのだ。恐らくベンハーに少なからず過失があるところが大きな差だとは思うが、ここのインパクトが足りなかった。


また部分部分のシーンの飛び方がうまくない。
家族から離れる→奴隷になる→逃げ出す→レースに出る
という大まかな構成だが、その継ぎ目がイマイチ。
特に奴隷船にのりました→数年経ちましたの急に数年後経った感は異常だった。
奴隷船の描写が圧倒的に少なく、ベンハーがいかに苦労したのか、死なないように頑張ったのかという点が全然現れてこない。
これでは復活に至るまでの挫折過程が十分描かれていないことになり、ベンハー復活時の感動も相対的に薄まってしまう。


極め付けはイエスキリストの扱い。
というのもベンハーはそもそも副題が『キリストの物語』とされるほど実はキリストが絡んでいる。
キリストの生誕→受難→復活がベンハーの姿と重なるようにできているのだ。
オリジナル版を見たときの初見時はあまり意識しなかったが、あえて顔を写さないキリストの描写に震えたことは覚えている。
キリストは人なのか?神なのか?顔が見れないからこそ神秘的であり、十字架を背負って歩くシーンにはどこか神々しさを感じたのだ。
だが、今作はどうだ。バッチリ顔が写っている。なぜ顔を映す仕様にしてしまったのだろう。これではあの神秘的な雰囲気が出せないではないか。

等々…色々と文句をつけたくなる映画だった。
ど素人の私ですら思うのだから、さぞ評論家のお眼鏡にはかなわなかったのだろう。

総じて言えば、全然印象に残らない映画。
一番印象に残るのがモーガンフリーマンの長髪の髪型っていう時点でもう終わってる。


2017.2.23
kirito

kirito