垂直落下式サミング

グランド・イリュージョン 見破られたトリックの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.1
一作目は、メンタリストDaiGo的なトリックが満載な見世物映画で、今思えば楽しかったような気がするけど、今回はクライムアクション方向にふり切っていて、トンデモマシマシ荒唐無稽アクション活劇ではある。
戦闘しまくり、CG使いまくり、催眠術かけまくりかけられまくりで、手品師はスーパーアスリートか超人、メンタリストはほぼ魔法使い状態!手品そのもので驚かそうといった趣の映画ではないが、ボディチェックをすり抜けながらカードを手渡ししていくシーンは、役者本人が実際に手品のテクニックを駆使した芝居をみせていて、かなりドキドキするので楽しかった。
欲を言えば、前作の「ダイヤの7」のような、みている観客も巻き込んで驚かせてくれる仕掛けがあってもよかったと思う。
映画ファンのあいだでは、けっこう人気ジャンルのどんでん返し系映画であるが、僕としてはあんまり感興をそそられない。作者に騙されるのが気にくわないとか、オチが読める読めないみたいな、そういう変なプライドが邪魔してるからじゃなくて、登場人物が罠にはまったりダシにされたりするのをみると、可哀想だと思っちゃうからだ。
この映画みたいな「人を騙すはなし」って下手を打つと気分の悪いものになりがちで、騙す対象が超怖いやくざの親玉とか、いけ好かない悪徳政治家みたいなやつじゃないと、むしろ主人公サイドが悪役にみえてしまう。
前作のように、実直そうな人を敵にしちゃうと、あんまり後味がよろしくない。モーガン・フリーマンみたいなおじいちゃんが騙されてやられちゃうのは、それこそ老人いじめっぽくて可哀想だった。
その点、今回のダニエル・ラドクリフは、調子こいた軽薄さを全快に迫ってくるので、相手にとって不足なし。加えてこいつは普通に悪いやつなので、主人公チーム大逆転のネタばらしシーンでは爽快感がマッハ。ざまあ!と叫びたくなる。
ハリー・ポッター役で一生ぶんの貯金があるからか、気に入ったもんにちょろっと出てみるラドクリフの仕事選びは趣味人っぽくて羨ましいな。この映画も楽しそう。そう言えば、ポッター少年ってけっこう嫌なやつだったよね。自分をいじめてくる子供や、きつく当たってくる先生がひどい目に遭ってるのをみて、ものすごくニコニコと嬉しそうに笑う様子がよく印象に残っている。
前作のどんでん返しな結末から、さらにどんでん返しをキメて、その幻想をぶち壊していく展開は評価の別れるところではあると思うけど、僕は前のおはなしはあんま好きじゃないので、いい裏切りだったと思う。