80年代の陰鬱な英国。今なお評価が割れるサッチャー元首相の政権下で、産業は力を失い、多くの失業者を生み、貧富の差は大きく広がった。そんななか起きた、炭鉱閉鎖に反対する炭鉱夫達のストライキ。突然マイノリティとなった炭鉱夫達の運動を支援したのは、ねっからのマイノリティとしてお馴染みの同性愛者達。
歩み寄る同性愛者達とそれをおそるおそる受け入れていく炭鉱夫達。反発はもちろんあるが、その歩み寄りが明るくコミカルで動的なのがこの映画の特長。同性愛者ならではの絶妙な距離感と明るさが映画を明るくする。下ネタや差別表現、シニカルな笑いなども、不謹慎ではなく重たくもなりすぎず、明るくポップに顔を出す。
感情が大きく表出する一つの場面として、集会所で歌い出した一人の女性から、徐々に大合唱に変わっていくシーンがある。その歌一つで、女性達がどうやって、どんな気持ちで夫である炭鉱夫達を支えていたかが分かるし、炭鉱夫達やその街に受け継がれてきた歴史を感じることができる。涙が前に飛ぶぐらい響いた。少なくとも僕には。
人々を取り巻く複雑な状況に対して説明的になることはなく、さらっとスピーディに映像でみしていく表現力は見事で、冒頭5分位のカラフルでテンポの良いの映像は良くできたPVのようなノリの良さ。
音楽のチョイスも素晴らしく、80sロックやディスコクラシックなどが鳴り響く。smithsやjoy division、new orderなんかは80年代の英国の暗さを表現するにはうってつけで、陰鬱で自虐的で退廃的な音楽の数々から当時のイギリスのムードを感じとることができる。ディスコチューンはゲイミュージックとして、同性愛者達の後ろで上手く雰囲気に色付けている。このころの音楽の感じはやっぱ好きで、シンプルでくっきりとしたビートに甘いメロディやギター、そしていなたいピアノがとても良い。
最後ちょっとくしゃっとした感じになってたけど、それでもすごく良い映画。笑って泣いて、勇気付けられる。ドラマとしての旨味が全部入っていたと思う。