むーしゅ

ダーティ・グランパのむーしゅのレビュー・感想・評価

ダーティ・グランパ(2016年製作の映画)
3.1
 「アリ・G」「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」「ブルーノ」とSacha Baron Cohen主演作品の脚本家として知られるDan Mazerの監督作品。ポスターの横顔がJ. K. Simmonsに見えますが実はRobert De Niro主演作で、またこんなポップなイメージを微塵も感じない下品なコメディ作品です。

 結婚を控えた弁護士のジェイソンは、妻を亡くした祖父ディックから熱望され、渋々夫婦の思い出の地であるフロリダまでの旅に同行することにする。ところが祖母を亡くした悲しみを癒す旅だと思っていたジェイソンを尻目に、祖父ディックは久しぶりの独身生活を満喫し始め、2人でデイトナビーチへ繰り出そうと提案するのだが・・・という話。デイトナビーチといえばデイトナ・インターナショナル・スピードウェイがあることもありモータースポーツのイメージもありますが、学校が休みの時期に入ると多くの大学生が押し寄せるそうで、本作のくだらない旅の目的地としてはピッタリ。Dan Mazer監督は本作の脚本を担当していませんが、最初から最後までずっと下ネタというDan Mazer過去脚本作と何ら変わらない作品に仕上がっています。

 この映画はずばりRobert De Niroを楽しむということにつきます。演じたRichard "Dick" Kellyは名前から想像できる通りのエロ親父で、喪に服す間もなく若い女の子を追いかけ回します。こんなヘビー級ハチャメチャな役を今更引き受けてくれるRobert De Niroに感謝するしかないですね。台詞も大半がスレスレかアウトですが、楽しそうに演じている彼を見ていると何も言えません。公開時72歳にしてこんなお馬鹿映画で過去のキャリアを粉砕するほど暴れまわっている姿を見れただけで満足です。ちなみにこの役は先にJeff BridgesやMichael Douglasに声がかかっていたようですが、Jeff Bridgesはイメージが違うなという感じ。ただMichael Douglas版はよりエロ親父度が増しそうで是非見てみたいですね。

 そしてそんな名優の胸を借りる形でダブル主演をしているのがお馴染みZac Efronですが、こちらは相変わらずいまいちです。Zac Efronって坊っちゃんの役は出来ても知的なイメージが皆無なので、本作のような堅物弁護士は全く似合わないです。理屈っぽいイメージはあるので堅物はわかるのですが、弁護士がどうにも駄目です。やっぱり彼がコメディに出演するなら「ネイバーズ」シリーズのようなお馬鹿な役(顔のかっこよさだけで生きている感)が一番似合います。

 それに比べてAubrey Plazaは熱演ですね。公開時31歳にも関わらず10歳程度若いと想定されるビッチな大学生を演じており、これがかなりのはまり役。同年公開の「ウェディング・フィーバー ゲスな男女のハワイ旅行」でも引き続きイメージそのまま(というより強化されている)の役でAdam DeVineとZac Efronを魅了しています。ちなみにこちらは「ネイバーズ」と同じくAndrew Jay CohenとBrendan O'Brienが脚本家を務めているためZac Efronの使い方がわかっており、やっぱり本作でZac Efronが演じたジェイソンには物足りなさを感じます。

 さて本作の脚本は2011年のブラックリストに掲載されたことで映画化した作品ですが、おじいちゃんと孫という題材の映画が多い中差別化には苦戦しています。予想通りにどれだけ下ネタ満載であっても最後はやっぱり心温まるかたちで終わらせようとしていますが、ハチャメチャしていた割にはギャップから来る感動が押し寄せず、これなら最後まで下ネタで駆け抜けてくれても良かったのでは、と思わされます。同年ブラックリストには同じような関係性を描いた「ヴィンセントが教えてくれたこと」がありましたが、こちらの方が物語が上手くまとめられており、比較するとどうしても劣って見えます。場面ごとにコントとして捉える見方もあるかと思いますが、そうすると「ジャッカス クソジジイのアメリカ横断チン道中」とも重なってくるため、何とも難しい位置の着地を狙った作品だなと感じました。そういう意味でも鑑賞目的を「Robert De Niroが大暴れするのを楽しむ」か「Zac Efronの裸が見たい」と割り切った方が良い作品ですね。
むーしゅ

むーしゅ