たらお

セッションのたらおのネタバレレビュー・内容・結末

セッション(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

音楽にガムシャラに打ち込み、犠牲を払いながらもやりたいことに打ち込んだ男の話。演奏することで自分を表現する男同士のぶつかり合いが今作の肝かと。
映画館で観ることで音響による迫力の違いは勿論、鬼気迫るパフォーマンスを堪能出来ました。
演奏者達の指、手、口元などの動きに注目しつつも音楽の力の偉大さを改めて感じましたね。
音響のおかげで演奏シーンにおける僅かな音の乱れやグシャッと飛び散った部分がわかったのも助かりました。演奏シーンの度にひたすら音の波に身を委ねましたわ。
なんせ音楽が奏でる旋律に耳を傾けてリズムをとっていた自分がいましたもの。
「技法じゃなく、テンポを大事に」
これはニーマンにとって自分の殻を打ち破る大きなヒントだったはず。

演奏に取り憑かれ、やがてニーマンの顔つき、目つきが変わってギラつき、光が無くなっていくのには背筋が冷えますね。
まあ彼の言動に共感は出来ないし、同情もしませんけど。
自惚れが過ぎると身を滅ぼしますよね。
上達したい、馬鹿にしてきたヤツらを見返したい、フレッチャーに認められたい……
色々な気持ちが混ざり合って濁ってしまったのでしょうが初心忘れるべからずです。
好きだったはずの音楽、ドラム。
何故それを始めたのか? 自分は何処を目指していたのか?
一度見失ったら中々それに気づけないんですよね。

ラストの演奏はただただ圧巻されましたし、ニーマンがドラムに自分の全てを叩き込んでいる姿から目が離せませんでした。
あの瞬間、ニーマンはドラムを叩くことに魂を燃やしていましたし、この後がどうなっても自分が持っている全てを出し切っていたんですよね。
あれはニーマンにとってフレッチャーから受けた教育への返答だと思っています。
フレッチャーは気づかぬ内に一人の「怪物」を育て上げたんだな……と。
お互いに憎しみの感情があれど演奏している瞬間だけあの二人はわかり合えるし、ニーマンにとっては屈辱でも自分を変えてくれた師匠であることは間違いないはずですから。
音楽を通してでしか表現出来ない、伝えられないものがあるんだよな、と心を震わせられる良き映画でした。
たらお

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