むーしゅ

セッションのむーしゅのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.6
 J. K. Simmonsが出ている予告編を見て、相変わらずはまり役すぎて逆に見るのに勇気がいるなと思い置いていた作品。これはホントすぐ見るべきだったね。最高すぎた。

 夢と希望に溢れてシェイファー音楽学校に入学したドラマーのニーマンと指導者であるフレッチャーが出会うところから物語は始まる。最初は優しいフレッチャーだが、次第にフレッチャーの行き過ぎた指導が始まっていく。106分の映画だけど、ホント無駄なシーンが一切なくてびっくり、そして一瞬で見終えてしまうスピード感。Damien Chazelle監督は当時28歳という若さなのに、末恐ろしすぎる。

 まず何が良かったって、ニーマンとフレッチャーの二人。もうほんとこの二人以外の役者は正直空気でしたね。そもそもどっちもクズなんですこの二人。Miles Teller演じるニーマンは最初こそ、ちょっとファザコンの優しい男の子っていう感じで、嬉しいことがあると抑えきれない少年っていう感じですが、途中からの態度といったらもう人としては最悪なわけです。親戚にも恋人にも上から目線がすごくて、フレッチャーから可哀そうな仕打ちを受けてもむしろ視聴者側からすればちょっとスカっとしちゃうくらいクズ。対するフレッチャーはなお増してクズで、もう汚い単語を入れないと話せないんじゃないかと思うほどはちゃめちゃ。個人的にはJ. K. Simmonsはオズの頃から悪魔しか似合わないと決まっているので、もう最高。画面に向かっておかえりと言いたくなるほど、最恐の悪魔です。でも結局2人とも音楽馬鹿なだけなんですよね。人としてはどんなにクズでも音楽に向き合う二人は悔しいけどなんかかっこいいわけで、これだけでも見る価値がある。

 そしてもう一個良かったことは、カメラワーク。特に演奏中のそれは本当素晴しい。音楽系の映画ってどうしても演奏シーンが間延びしがちなのに、メロディとリズムに合わせて、絶妙にミディアムショット、クローズアップ、ディテールショット、パンを利用したり、アングルを変えたり本当に色々混ぜることで全く飽きずに演奏を楽しめる。また被写体も演奏者だけではなく、楽器や指先、楽譜、時には汗や血まで様々なショットを混ぜることで、もはや何だかボクシングの試合を見ているようなそういった気持ちがしてくる。ほんとアングルが多すぎるけど演奏中の撮影にカメラ何台用意したんだろうか。そしてなんといっても最後のキャラバンの2人を交互に捉えたロングテイク。しかもそこで、これでもか!としておいて、そのあと更にドラムソロ残してるんだから侮れない。Damien Chazelle監督自身、学生時代はミュージシャンを目指し、ジャズドラムに励んでいたようなのでまさにそういった経験が活きているでしょうね。そしてそしてまさか最後のドラムソロで自己陶酔し音を一回切るとは思わなかった。本当やってくれる。

 正直アカデミー賞の作品賞も「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」じゃなくてこっちだと思いますね。最後の二人の表情だけでご飯3杯は食べれるんじゃないかと思う映画でした。
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