SANKOU

アバター:ウェイ・オブ・ウォーターのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

まず192分の長尺でありながら全く中弛みがなく、幻想的で美しい映像に最後まで釘付けにされる。
前作同様、それほどドラマとして密度が高いわけではないのだが、とにかく映像に魅せられる作品だ。
舞台を森から海へと移したことで、より世界観が大きく拡がったようだ。
ナヴィが大空をイクランに跨がり悠々と飛び回る姿もダイナミックだが、まるでクジラのような姿のトゥルクンと共に海中を泳ぐ姿はそれ以上に雄大だ。
ジェイクとネイティリの子供たちもそれぞれに個性的で魅力的だ。
中でもジェイクに認められたいあまりに無鉄砲な行動を取ってしまい、結果的に家族を困らせてしまうロアクと、グレースの忘れ形見であり、誰よりも自然と調和することが出来るキリが印象的だった。
トルークマクトとして部族の長となったジェイクだが、今回の作品で彼は家族を守るために逃げの選択をする。
前作でジェイクと死闘を繰り広げたクオリッチは、記憶だけをアバターに移植して甦り、復讐のためにジェイクの家族を狙ったからだ。
全編通してこのクオリッチの個人的な怨念が強すぎると感じた。
実は彼には一人息子があり、その息子スパイダーはジェイクの子供たちとまるで兄弟のように親密な関係を作り上げていた。
クオリッチはジェイクの子供たちを拉致しようとして失敗し、代わりにスパイダーを連れ去る。
身体は変わっても息子への愛は残っているのだろう。
彼はスパイダーに対しては手荒な真似はしない。
そしてスパイダーも初めはクオリッチを寄せ付けなかったが、次第に真のナヴィに近づこうとするクオリッチにアドバイスをするようになる。
この親子の絆が、もう二転三転新しい展開を作り出せそうな気がしたが、結局は争い以外の道を選べないという結論に行き着くのは何だか哀しい想いがした。
人間がトゥルクンを狩るシーンは痛ましいが、クジラ漁でも同じような光景が見られるのだろうし、家畜を食べるために殺すのも同じように見方によっては残酷だ。
しかしこの映画で人間はトゥルクンを食べるために殺しているのではない。
トゥルクンから抽出される老化防止の効果がある僅かな液体を手に入れるために殺しているのだ。
人間は欲望を満たすために身勝手に動物を殺している。
前作同様にこの映画では人類は残酷な侵略者だ。
もし人類が地球に住めない未来がきたとしたら、この映画のように他の惑星を侵略することになるのだろうか。
平和な社会の裏では、とんでもない残酷なことが行われているのではないか。
そんなことを考えさせられる作品でもあった。
SANKOU

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