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コロニアの消費者のレビュー・感想・評価

コロニア(2015年製作の映画)
3.8
・ジャンル
実話ベース/サスペンス

・あらすじ
1973年、インフレが進み食糧不足となりチリの首都サンティアゴでは激しい抗議運動が行われていた
ドイツからフライトでやって来たCAのレナの恋人であるジャーナリスト、ダニエルもまた運動に参加する内の1人だった
彼らがアジェンデ大統領の支持派として活発に動いていた最中、ピノチェトによる軍事クーデターが発生
ダニエルは運動に関わっていた罪で連行されてしまう
彼は捕虜として“コロニア・ディグニダ“というドイツ人の入植地へと連れて行かれたのだ
その地は表向きは慈善団体の共同体であったが実態は違った
絶対的な指導者パウル・シェーファーの独裁支配下にある施設だったのだ
その事を知ったレナはダニエルを救うべく信徒を偽り潜入を決意
外界から遮断された共同体は一目で異様と分かる環境だった
入所と共に荷物は没収、男女は隔離されて生活し謎の薬が日々投与される
日夜続く労働では水分補給も許されず手を止めれば体罰が課された
そんな苦境の中でもレナは耐え忍びどうにかダニエルと再会し共に脱出しようと機会を伺い暮らしていくのだが…

・感想
チリ南部に実在した元ナチス党員の指導者パウル・シェーファー率いる宗教施設コロニア・ディグニダを題材としたサスペンスドラマ作品
先日観た「コロニアの子供たち」と同様に「オオカミの家」を観る為の予習として鑑賞

「コロニアの子供たち」がコロニア・ディグニダ内部の異様な空気感にフォーカスを当てていたのに対し、本作は当時のチリの政情や軍政府との蜜月関係などより分かりやすく実態を描いていたので足りない部分が補完出来たという意味では満足
常に緊張感を漂わせながらサスペンス性や脱出劇、収容されている住民女性達の背景に至るまでなかなか詳細に描かれていてそちらも良かった

惜しかった点としてはない物ねだりになってしまうかもしれないけど「コロニアの子供たち」にあった空気感の演出がやや弱くありきたりな潜入物っぽくなっていた所がある
指導者シェーファーや女性達の管理者ギゼラなどが割と露悪的に描かれていた事を考えると小児性愛や拷問等も言及だけでなくしっかり描かれていたらまた違ったと思う
緊迫感は十分あるんだけど閉塞感が物足りないというか…

ただその分、2時間弱という尺の長さでも飽きさせない展開のテンポの良さや内部でのダニエルの潜伏の仕方などエンタメ的に楽しめる部分が多くクライマックスの鬼気迫る脱出劇も見応えバツグン
空港に辿り着いてもすんなり行かない感じがまたシェーファーの息がどこまでかかっていたかを如実に表していてイイ
終幕後に映される実際の写真の数々がまた物悲しくおぞましい…

とりあえずコロニア・ディグニダを取り上げた重要作品は2作とも観たので後はネトフリで配信されているドキュメンタリーを完走してから「オオカミの家」の鑑賞に臨む予定
とにかく独特な恐ろしい世界観との事なのでそちらを楽しみにしたい
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