kkkのk太郎

アップルシード アルファのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

アップルシード アルファ(2014年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

女傭兵デュナンと戦闘サイボーグのブリアレオス、2人の愛と戦いを描いたSFアクションアニメ『アップルシード』シリーズを装いも新たにリブート。

世界大戦により荒廃した近未来。ニューヨークを牛耳るギャングのボスである双角の下で汚れ仕事を請け負っていたデュナンとブリアレオスは、とある仕事の最中に1人の少女を保護することになるのだが、その出会いが彼らを大いなる戦いの渦中へと引き込む…。

原作は士郎正宗が1985年から1989年にかけて発表していた漫画「アップルシード」。これは未読。
この「アップルシード」というシリーズは色々なメディアに派生しておりなんだかややこしいので、ここで一度整理しておこうと思う。

まず1988年に初の映像化。タイトルは『アップルシード』。OVAという形式で発売。当然だが、この作品は2Dアニメ。未見。

2004年には初の映画化。タイトルは『APPLESEED』で、監督は本作と同じく荒牧伸志が務めている。この時はじめて3Dアニメ化されたのだが、デザインは本作のようなフォトリアル調ではなくあくまでセルアニメ調。ここで一旦リブート。

2007年にはその続編が公開。タイトルは『EX MACHINA -エクスマキナ-』。…「アップルシード」はどこに行ったの?
監督は引き続き荒牧伸志。プロデューサーがジョン・ウー、音楽監修が細野晴臣、衣装デザインがミウッチャ・プラダという謎に豪華な多国籍チームにより制作されている。
この2作はほぼリアルタイムで鑑賞。1作目はめっちゃ好き💕!!2作目も悪くなかったんだけど、ブリアレオスの声優が小杉十郎太から山寺宏一に変更されてて嫌だった思い出がある。20年近く見返していないので、そろそろ再鑑賞しようかしらん?

2011年にはテレビアニメ化。タイトルは『APPLESEED XIII』。これも3Dアニメ。キャラデザがヘナチョコすぎたし、デュナンの声優が小林愛から坂本真綾に交代されていたのが嫌で鑑賞せず。そのため、これが続編なのかリブートなのかよく知らない。2本の総集編映画が劇場公開されたらしい。

そして2014年、5度目の映像化となる本作が公開された訳です。
監督が一緒だし、予告編で前日譚かのように宣伝されているし、本作と旧劇場版は世界線が繋がっているのだろうか?なんかその辺のことが結構曖昧なんだけど、設定や相関関係はちゃんと説明されるので旧作を観ていなくてもなんら問題はないだろう。

長々と前置きを書いてきましたが、この映画の感想は至ってシンプル。全然おもんない🌀🌀🌀
平坦なシナリオ、魅力のないキャラクター、退屈なアクション。どこをとっても良いとこなし。

一番問題だと思ったのは、アニメーションに全く色気がないこと。
フォトリアルな映像は一見綺麗に見えるが、アニメ本来の魅力であるはずの外連味が全く表現できておらず、ただただつまらなさが際立ってしまっている。
というか、こういうフォトリアルな映像ってどうしてもゲームのムービーに見えちゃう。世界観やキャラデザは「ファイナルファンタジー」っぽいし、多脚移動式砲台は「メタルギアソリッド」っぽい。90分間ゲームのムービーを観ている気持ちになっちゃった。いっそのこと自分でプレイさせてくれ!
フォトリアルな映像作品としては『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』(2005)なんてものがあったが、これはゲームの延長線上として鑑賞したので違和感はなかった。本作のように単体の作品としてリアルな3Dアニメを作られても、どういう感情で観れば良いのかよくわからん。

まぁリアルなデザインなのはそういう路線で描きたかったんだね、ということで納得はできる。モデリングも悪くなく、CGで作った顔がなんか気持ち悪く見えてきちゃう「不気味の谷現象」は起こっていない。…まぁちょっと気になるところはあったけど。
ただ、無駄にリアルにし過ぎたせいでデュナンのほうれい線がめっちゃ気になる…。ジブリの『おもひでぽろぽろ』(1991)を思い出しちゃった。
アニメでこういうところをリアルにやっちゃうと、途端におばさんっぽさが増してしまう。そこはもう少し嘘をついても良かったのではないだろうか。それとも、実はデュナンって結構歳いってんのかな?

デザイン面で気になる点がもう一つ。デュナンの服装がセクシーすぎ!!
2Dアニメやセルルックのアニメならともかく、リアルなデザインでこんなオッパイがボインボインした服をキャラクターに着せるというのはノイズでしかない。そんなナリした傭兵がいるか!!
リアルなデザインを選択したのであれば、細部までリアルさを追求すべき。そんなところに日本アニメっぽさを出さなくてもいいからっ😩

外見は丁寧に作り込んであるが、なぜかハリボテのように見える。これは映像に”重さ”という概念をうまく取り入れることが出来ていないからなんだろう。
全身サイボーグのブリアレオス。金属の塊なんだから、当然その体重はバカ重いはず。1トンくらいあっても不思議じゃない。そんなキャラクターが今にも崩れそうな廃ビルの上をピョンピョンと飛び移りながら戦っているというのは…。
本作同様、士郎政宗の漫画を原作にしているアニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)。この作品の主人公である草薙素子も全身サイボーグなのだが、彼女が高所から飛び降りる際にはちゃんと着地点がベコっと抉れている。全てが虚構の上に成り立っているアニメという媒体において、”重さ”のように目に見えない事象をどう表現するかは非常に重要。その追究にこそアニメの真髄があるといっても過言ではない。
重さを感じないペラペラのキャラクターにはなんの感情移入も出来ない。映像をリアルにする前に、そういう演出にリアリティを持たせるべし!!

ロケーションもまた色気がない。基本的にはずっと荒野。旧劇場版で未来都市を見ている分、ずっと茶色が続く今回の画面には余計にげんなりしてしまった。からあげかよ。

脚本のつまらなさも大きな問題だと思う。終盤、双角が急にベビーターンしたり、都合が良すぎるタイミングでパワードスーツが到着したりという展開にはおいおい…なんて思ったりしたがそこはこの際置いておく。
許せないのはあの超カッコ良いパワードスーツの扱い。デュナンがスーツを着込み、すわ決戦かっ!と思わせておいてからの即効大破。なんの役にもたってねぇじゃねぇか!!
もう少し歌舞伎的な大立ち回りを観客見せてもバチは当たらないっすよ。

あのメタルギアもどきの暴走もなぁ…。
ニューヨークまで移動して、そこで自爆する。ヤバいッ!!…とはならない。だってすでに廃墟じゃん。
もちろん、スラムとなった街には大勢の人間が住んでいるんだろうが、その人々を描いてないからなんの緊張感も生まれていない。
予算の関係もあるのだろうが、こういうサスペンスで物語を引っ張りたいのならモブの書き込みは必要以上に丁寧に行うべし!!

本作のメインヴィラン、タロス。お前は結局何がしたかったんだ…。
キャラデザといい言動といい、良いところが一つもない悪役。良いところがなさすぎて逆に愛おしくなってくる。
謎の組織”トリトン”とは一体…?…まぁどうでもいいか。

最後の最後にズッコケたのはエンドクレジット。クレジットのフォントがダサすぎる💦ファントにかける予算すら残ってなかったのか?

旧劇場版から10年。その間にCG技術は急激に成長した。
確かに旧シリーズに比べ映像面は綺麗になってはいるが、だからといって映画が面白くなるわけではない。
旧シリーズのワクワク感が一切失われている本作。アニメーションの快楽とはなんなのか、製作陣にはその辺りのことをもう一度考え直して頂きたい。
ポスクレで次回作への布石をがっつり打っていたが、この続きが観られる日はおそらく来ないだろう…。

…そういや、あの思わせぶりに描かれていた双角のライターって結局何だったんだ?焚き火焚いただけじゃね?
まぁこれもどうでもいいか。

※「もはや新次元の領域だ」とは、本作に寄せられたジェームズ・キャメロンのお言葉。
『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015)の時といい、相変わらずこのおっさんはいい加減なことばっか言ってんな😅
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