ちろる

花とアリス殺人事件のちろるのレビュー・感想・評価

花とアリス殺人事件(2015年製作の映画)
4.3
予想以上に良かった。

元来、人物に生き生きとした人格を吹き込むこと、瑞々しい青春を描くことにとても秀でた監督ですが、果たしてアニメーションにしてもその瑞々しさを出すことが出来るのだろうか?と多少の不安もありつつ観ました。
しかしそんなのは開始すぐのバレエシーンで一気に吹っ飛びました。
最初から岩井ワールド全開です。

殺人事件と付いている題名ですが、サスペンス的要素があるわけではなく、そのプロット自体は不十分な気がしたのですが、それにも関わらず岩井監督ならではの素晴らしい演出力がその不足分を補うのに充分なくらい物を言います。
観ていると映像と重なるように思い浮かぶ、自分の少女時代にあったような青春の1ページや、どのシーンを切り取っても生き生きとしている人物像の描き方には実写版同様に感銘を受けました。
日本アニメーション業界は素晴らしいので、アニメーションとしてすごいというとすこし語弊が生じますが、岩井監督しか作れない映像を長編アニメーション初監督にしてここまでにして作り出したことはほんとに素晴らしい。
「岩井俊二のアニメだったらこれでしょうね。」と言わざる得ないものがここにありました。

前作の花とアリスが大好きだった人はきっと満足します。
ただ、花とアリスの世界観が気に入らない人には向かないかもしれません。

これから観る方は、是非とも前作の花とアリス実写版を観返して頂けると、今作とシンクロするシーンと沢山出てきて倍楽しめるはずです。
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