ゾウの事が色々わかる。
そんな映画。
ゾウの妊娠期間は哺乳類で最も長い22ヶ月。
命を落とした仲間の亡骸を弔う習性があり、
涙を流すという。
とある精神病院。ローレンスという医師が原因もわからず失踪した。手掛かりを知るのは患者のマイケル(グザヴィエ・ドラン)のみ。院長のグリーン(ブルース・グリーンウッド)は、ローレンスの行方を聞き出す為にマイケルとの対話を始める。
話をする代わりにマイケルが院長に提示した条件とは…。
①自分のカルテを読まない事
②褒美にチョコレートをくれる事
③看護師長をこの件から外す事
凄い!!
グザヴィエ・ドランの演技に圧ッ倒される!!
終始、調子外れな彼との対話にグリーン院長は苛つきを隠せない。核心に迫ろうとすると、ゾウやオペラの話題に逸らしてしまうマイケル。院長にとっては、元妻にあたる看護師長(キャサリン・キーナー)への暴言をワザと吐き、院長の気持を逆撫でる。
ひたすらマイケルに翻弄される。
それは観ている者も同じ。
ドランくんの演技が上手過ぎて惹き込まれる。
こっちまで苛つき始めたら、完全に彼の術中にハマったようなもの。
元は戯曲との事で、会話劇、密室劇として面白い。
…ものの、終盤にかけては少し残念。
以下ネタバレ含みます。
ローレンス失踪の理由が個人的にはかなり拍子抜け。もっとサスペンス的な展開を期待してしまった。
本当は、マイケルの不遇な生い立ちや、愛し愛される事が本質的なテーマなので、そちらにしっかりフォーカスさせるべき。前述のローレンス失踪が大した事件ではなかった事で、観客の緊張の糸を一度途切らせてしまっており、ドラマティックな感情でラストシーンを迎えられなかったのが残念。
母に愛されなかった事。
一度しか会っていない父は象牙の密猟者であった事。
誰にも愛されなかったマイケルをローレンスは愛してくれたが、彼に触れられる事はなかった事。
マイケルとしては耐え難い苦しみが、ラストの悲劇を招く。
カルテやチョコレートの伏線回収は見事だし、作品としては悪くないけど、ローレンス失踪に何の事件性もないのが、若干の肩透かし。
グザヴィエ・ドランの演技に酔い痴れるという意味では、おススメ。