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マウス・オブ・マッドネスのmarohideのレビュー・感想・評価

マウス・オブ・マッドネス(1994年製作の映画)
2.5
 想像以上にかなりクトゥルフだった。SAN値高めのクレバーな保険調査員とSAN値低めの女性出版編集者というコンビがまず、いかにもそれらしい。
 ジョン・カーペンターの「遊星からの物体X」はクトゥルフ神話TRPGのルールブック内にも言及されるほどクトゥルフチックな作品だったので、その監督が撮ったクトゥルフものとなればそうなるのも当然か。

 主演のサム・ニールの演技が完璧。ファンだからといって色眼鏡で見るわけではないが、彼の内なる狂気を必死に押し殺そうという静的な演技と、それが溢れ出して爆発してしまう動的な演技の緩急は実に巧みに演じ分けていたように思う。この俳優の鋭くてちょっと爬虫類っぽい目つきが好きです。
「私は青が好きでね」のシーンとラストの映画館のシーンが特に良かった。

 現実主義者の男が徐々に正気を失っていく様を丁寧に描写しており、現実と虚構が混濁していく様子を多彩な表現方法で見せてくれた。突然シーンを飛ばしたり、リフレインを多用したりと、一つ一つが効果的である。また、狂っていく主人公と、その周りの“正気な”人々の温度差も上手かった。


 と、ここまで褒めてきたが、ではハマりきれたかと言われるとそうではないのが残念なところ。なんとなく全体から漂うB級感は否めない。個人的には音楽があまり好みでなかったのかもしれない。バチバチのロックよりも、それこそ「旧支配者のキャロル」みたいなテイストだったほうが自分は入り込めたかもな。
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