Ren

最後まで行くのRenのレビュー・感想・評価

最後まで行く(2014年製作の映画)
3.5
リメイク版と比較したくて初鑑賞。よく「韓国映画」として括られる(2010年以前のポン・ジュノやパク・チャヌクやナ・ホンジンに代表される)、暗くて湿度が高く纏わりつくような居心地の悪さは意外と希薄ながらも、なかなかどうして面白かった。

悪徳警察の主人公による殺人隠蔽工作が取り返しのつかない事態へ向かっていく。一つも応援したくならない愚か者主人公のはずなのになぜか応援してしまうフィクションの妙。「泥沼すぎてもはやコメディ」を地で行く映画に久々に出会った。
確実に『ファーゴ』フォロワーのサスペンスなので新鮮味は今一つなものの、後半に行くにつれ段階的に過剰に大味になっていく馬鹿馬鹿しさがエンタメとしてとても良かった。

何か一つ手を加える度に取り返しがつかなくなっていく。次第にギアを上げていき、場面毎に、そんなわけあるかい大喜利を出し尽くす。個人的には中盤明かされる驚きの事実と車にそんなことするな大喜利が特に面白かった。人間が流石に死ななすぎるのも馬鹿馬鹿しくて面白い。

ただこのようなどちらかが死ぬまで続くエンドレス泥沼攻防は『悪魔を見た』が金字塔を打ち立ててしまったので、画の過剰さはどうしても比較してしまった。でも今作は、決められたシチュエーションでこうなったらこうもがくしかないという必死さと汚さと苦しさがしっかり表現されていたので、一概に物足りないとは言えない。

ひたすらに、一瞬のプロローグの後5分で詰んだだろと思わせてから蛇行し続ける脚本アイデアの展覧会として楽しんだ。タイムリミットもの、心理的駆け引き、バイオレンスとテーマが変わり続けるのも飽きない。かと言ってパッチワークにはなり過ぎない。この手のサスペンスの佳作だ。

その他、
○『パラサイト 半地下の家族』の金持ちお父さんでもお馴染みイ・ソンギュン、超ダンディなのに真っ直ぐなイケメンよりしょうもない男役が似合う。岡田将生みたい。
○ 爆弾の布石のシーンは流石に布石のためだけのものすぎてどうなの?とは思った。
Ren

Ren