Torichock

最後まで行くのTorichockのレビュー・感想・評価

最後まで行く(2014年製作の映画)
4.4
「A HARD DAY/最後まで行く」

都内でひっそりと上映されていたことは知っていたのですが、鑑賞条件が厳しくて劇場で観ることができず、レンタル。友人の勧めもあり、心躍らせてレジに向かい、レンタルをして鑑賞!

こ、これは劇場で観て大笑いしたかったぁ!
韓国映画は元々好きなんですが、その大半の作品は血みどろ・ぐちゃぐちゃ・ドロドロの激烈なバイオレンス映画。本作も、これはドロドロのやつが見れるぜ!と思ったのですが、特にレーティングはナシ?
んんん?と、疑った自分が恥ずかしいくらいの傑作、体感時間48分です。

深夜、車を飛ばす、コ刑事。
自分の母の葬儀を抜け出してまで急ぐのは、汚職(賄賂)の調べが入ってしまったから。その道中で、なんと人を轢き殺しまう。
焦ったコ刑事は、事件を隠蔽しようとして、あろうことか轢き殺した死体を、母の棺の中に入れてしまう。
母の棺を埋葬し、汚職の件も仲間がうまく立ち回ってくれ、被害を最小に抑えることに成功し、汚職・事件隠蔽ともはな安心したコ刑事。(ちなみに韓国は土葬)
そこに一本のタレコミが入る。
それはコ刑事の起こした轢き逃げ。
ほどなく刑事事件に発展し、自分の事件を調査し始める仲間たち。
そして、追い打ちをかけるように一本の電話が鳴る。
"お前があの晩やったことは知ってるぞ"
コ刑事は、自分の起こした事件の坩堝に飲み込まれていく...

あらすじを書いただけでも傑作の匂いしかしないですね。

先も話したように、ショック・残酷・残忍・ドロドロ映画という印象が強い韓国映画。
しかし本作は、血みどろのアクションになる一歩手前。
ドロドロのサスペンスになる一歩手前。
おいおい、"最後まで行く"んじゃねぇのかよ?と思わないでください。
一歩手前の絶妙なバランス、サスペンス、バイオレンスとアクションもその一歩手前の絶妙なバランスを保ちながら、なんとスラップスティック的なブラックコメディにまで持っていく手際の良さ。
恐れ入りました。

まずは何より、キャストの顔。
この映画は、顔チガラ、顔面力で映画の魅力を80%持っていくような顔映画でした。
例えば、コ刑事を演じるイ・ソンギュン。
野村宏伸と我が家の坪倉を足して2で割ったような顔をしながら、劇中ずーーーーーっとビビってる。
バレるかバレないかのビビり顔もたまりませんが、彼を執拗に追いかけてくるパク刑事に初めて会った時の、ビンタされる時の顔は、飯3杯食えるほど最高です、面白い。
そしてそのパク刑事を演じるチョ・ジヌンの顔面力!
32インチのテレビで見たんですが、48インチの顔でした。(意味不明)
ネタバレになりますが、爆破後にコ刑事の家に訪ねてくるパク刑事のルックだけで5億点出てました。
髪の濡れ具合と目の血走り、あとは肉肉しいパンパンに膨らんだ顔。
よぉ〜っ!とかの掛け合いが入りそうなくらいの顔面力。
もちろんその顔面力同士の、スラップスティックアクション(コメディ)戦闘シーンは、顔面に笑いながらもアクションのキレにハラハラするのも素晴らしい。
傑作、"息もできない"にも出ていた、"楽"な"天"の社長さん似、もしくはダメな渡辺謙みたいなチョン・マンシクさんの顔面力もたまらないですけどね。

そして、見る人を振るいにかけてきたバイオレンスも極限まで抑えられているので、韓国バイオレンスが苦手な人でも見れるし、バイオレンス好きな人でも、ハラハラ見ることはできるバランスに仕上がっている!素晴らしい。

もちろん、バレるかバレないかのサスペンスも上手い。
母親の棺に、礫死体を運ぶシークエンスなんか、ハラハラしすぎてちょっと気持ち悪くなりました。
葬儀屋の一言
"なんかやたら重いな..."の一言で、ドキッとしたりするんですが、画面には鑑賞者を置いていくぐらいドキッとしてるコ刑事を見ることができるのもいいです。

顔面力合戦が楽しかったので、映画のラストシーンはコ刑事がサングラスをかけてしまったということもあり、尻すぼみ感はありましたが、そんなことは意に介さないほど、顔面映画として最高に楽しませてくれました。

韓国映画の入門編的にもオススメですし、元より好きな人は見なきゃ損な映画であることは間違いナシです。



追記・邦題の
"最後まで行く"
個人的にはグットセンスだと思います。
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