韓国の地方都市や日本の地方都市「柳川」「福岡」などを舞台に独特な感性で描くことで知られているチャン・リュル監督の作品。中国生まれで中国朝鮮族の3世、中国の延辺大学で中国語中国文学科の教授という肩書が珍しい。
不思議な物語。ストーリーは意味不明で理解に苦しむ箇所が数々あるけれど、慶州(キョンジュ)という街の美しさが心地よく、主演が「別れる決心」のパク・ヘイルと「私たちのブルース」などで人気のシン・ミナなので最後まで飽きることなく観れた。
親しい先輩の訃報の知らせで久しぶりに大邱(テグ)を訪れた北京大学教授のチェ・ヒョン(パク・ヘイル)。亡くなった先輩との7年前の旅を思い出したヒョンは、衝動的にそこからほど近い慶州(キョンジュ)へと向かう。以前と変わらず美しい緑に包まれた古墳の並ぶ街を懐かしむヒョン。彼にはどうしても確認したいものがあった。それは茶屋にあった一枚の春画。その茶屋を訪れたヒョンは、美しい主人・ユニ(シン・ミナ)に出逢う。しかし、そこに春画はなかった。
慶州という土地については詳しく知らなかった。1000年続いた新羅王朝の首都があった場所。豊かな歴史遺産で知られている。世界遺産都市と言われるこの地には、仏国寺、伝統的な民俗村、古墳公園などがあり、映像から現代的な建造物が見当たらないというのは当時のままの街並みが残っているのだろう。美しい街だ。
ヒョンが昔付き合っていた彼女を電話で呼び出した挙句、衝撃的な秘密を打ち明けられたり、ユニにも哀しい過去があったり、ヒョンの北京にいる中国人の奥さんが電話口で美しい歌を口ずさんだり、男と女の物語のようだが、これといって何かが起こる訳ではなく、ただ淡々と流れていく。
新羅王族が眠っている古墳の街で、死の影や死の気配も幻想的に感じるシーンもあるのだが、主人公のヒョンが変人や変態に間違われるくらいあまりにひょうひょうとした男なので、なんだか真に迫らない。
それでも最後まで美しい映像に惹き付けられた作品だった。何人かのフォロワーさんのレビューを読んで、ずっと前に📎をしたままだったが、今回無料トライアルのサブスクで観ることが出来て良かった。